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“2004年 夏のお見送り〜秋のお散歩” 編(3)



04.10.02 (Sat)
 Hill, Mt 「郷の秋」 
                                                                                                  

まだ、いてくれるだろうか...?
早いもので、もう10月。
しかし、先輩の過去(2000年)の記録では
10月中旬までアカアシクワガタを確認しているそうだ。

夏が終わって、まだ幾日も経っていないが
早くも、ムシ達の姿を通して、その余韻を求めたくなった。

今日は、ドライブ感覚で今夏お世話になった道のりを
一通りおさらいしてみたい。


〜 里山へ 〜


12:00、家を出発。
まずは、いつも相棒が利用しているエネオスで給油した。
今日は結構な距離を走る予定である。

それにしても、天気がいいし、道もすいていて
とても気持ちがいい!

とある水瓶の横を、一気に走り去り
まずは細道方面へ向かった。


いい天気ですねぇ〜。


小高い丘の谷間を縫う
稲作が終わった田んぼでは、野焼きをやっている模様。
辺りには、ぽつり、ぽつりと民家が見られ
とてものどかだ。
すっかり、秋の景色だね〜。


ポカポカとして暖かいです...。


まずは、今夏何度も世話になった根太のクヌギの前へ到着。
さすがに10月ともなると、林の中はひんやりしており
強烈な臭いを発しながら、バシッ!ジュワジュワ...と音を立て爆発していた樹液も
遂にうっすらとにじむ程度になっていた。

しかしよく見れば...



ゴジラの皮膚みたいですねぇ...(^-^;


この樹にあいた幾つかの洞に棲んでいると思われる
コクワちゃんが、ヨチヨチと闊歩しておった。
よく見れば、右の方には
スズメバチンもいる...。
今日飛んできたのだろうか?
居残りかね?
とりあえず、もう大分力がなく弱り果てていた。
風前の灯火といった感じ...。


コクワガタDorcus rectus rectus:MOTSCHULSKY, 1857):♂


暫く走ると、とある民家の横に
以前とは違った新たな薪炭材が積み上げられていた。

いる訳ないよな〜?

しかし、そうは思いつつも
ついつい車の中から材の表面を眺めてしまう。
すると...

んん!?
おいおい、いるじゃんよ、カミキリが!
よっしゃ、降りて見てみよ!


あれに見えるは...!?


あらら、やっぱりそうだ。
ちなみに
カタシロゴマフカミキリだった。

普通種だが
青白く、他のゴマフと違いやや光沢があって好きなカミキリである。
写真では分からないが、よく見れば産毛も沢山生えている。
よくぞいてくれたものだ。

この他には、どんなに探せど、カミキリの姿を見る事ができなかった...。
来年は、本格的に始動したいと思う。


カタシロゴマフカミキリMesosa hirsuta hirsuta:BATES, 1884


ちょっと車を走らせポイント「A川」に。

ややや!?
かすかだが樹液の臭いがするぞ???

すぐに臭いがするクヌギに近寄って、その幹を眺めてみると
一頭の赤いクワガタがとまっていた。

ノコギリクワガタである。

う〜む、この時期にしてまだ
ノコノコがいるか...。
チョビッツ感動してしまった...(^-^;
周囲には、コバエ一匹たりともムシがついていない。

おそらく飛来してきたばかりだと思うが
どうか今年限りの生を、最後までまっとうしてくだされ。。


まだいましたか。

ノコギリクワガタProsopocoilus inclinatusMOTSCHULSKY,1857):♂


一頭ながら、貴重なノコノコが確認できたので
何度か通っているヤナギが群生した湿地帯へも寄ってみる事にした。

夏とは違い
下草が随分枯れて、侵入しやすかった。
林の中には、渓流の一部が分岐して、入り込んでいる。
この辺りには、かなりのノコノコがいたはずだが...?

うん、そうだよね。 やはりいないよな。
さすがにシーズンは終わっていた模様。

はぁ〜、それにしても差し込んでくる木漏れ日が暖かい。
少々だが地面からは湯気が出ている。

そう、“暖かい” と感じられる様では、もはや秋なのである。


ここも、また来年来ます...


湿地帯から這い上がり
車に乗り込もうとすると、アスファルト上には一頭のコカマキリが....。

秋になりましたねぇ... のぉ?爺さん。。。


のぉ?爺さん...。



〜 水田へ 〜


続いては、水田地帯へ行ってみた。
タガメが沢山棲んでいるエリアだ。

トランクから網を降ろし
側溝の水溜まりを、落ち葉や泥ごとすくってみると...

おっと!?


一見、落ち葉の様にも見えましたが...。


もしかして、いきなりビンゴではないかい??

重なっていた赤い落ち葉をどけてみると
やっぱり
タガメだった。

こんなにひんやりした水の中につかっていたというのに
怒ってる怒ってる!

まぁ水棲昆虫だからね、これぐらいの寒さで、めげる事はないだろう。



タガメLethocerus deyrollei:VUILLEFROY, 1864):♀


更に周辺をガサガサやってみると
何と立て続けに!


タガメLethocerus deyrollei:VUILLEFROY, 1864):♂♀


結果、ここでは、1♂4♀、トータル5頭が確認できた。
いっぱいいるなぁ〜。

ちなみに一緒に網に入ったガムシは、首の関節部分が緩んでおり
中身が空っぽだった。

きっと、タガメに体液を吸われてしまったのだろう...。
タガメはゲンゴロウ、ガムシ類を捕食する際
概ね首の関節部分から吸汁する。

さて!回りたい場所はまだ沢山残ってるし
とりあえず、これらのタガメはリリースして次へ行こう。


〜 久しぶりにナガヒョウタン 〜


続いては、ゴミムシ類が良く湧いている
無人施設の敷地内をチェックしてみる事にした。

2〜3分ウロウロしていると...

おや?君は!

何と、1年振りに
ナガヒョウタンゴミムシと遭遇してしまった。

とは言え、この子の寿命も風前の灯火...。
弱々しく動いてはいたが、その上からアリの襲撃を食らっていた。

う〜む...
よし、決めた!今日のお持ち帰りはこれにしよう☆
何気に標本を持っていないし、まだ無傷だったので
とてもラッキー☆彡だった。


ナガヒョウタンゴミムシScarites terricola pacificus:BATES



〜 山へ 〜


何となく、そっちの山へ行きたくなった。
最後に訪れた日から、ちょうど3週間が経っている。
やや日は浅い(?)が、チャンスがあれば
年内にもう一度、足を運んでおきたいと考えていた所だ。

最寄りの国道へ移動して、ひたすら北上。
幾分混み気味で、時間がかかりそうだが
ここは気長に構えるしかない。

そんな中、左手に現れた電光掲示板にふと目をやると、この表示...。

うそ〜ん!
そんな訳ないだろ〜!?


26℃はありえませんって。


この時間で26℃もあれば、今晩、沢山のムシが飛び出しますって...(^-^;


ナガヒョウタンゴミムシのポイントから、下道を走って1時間半...。
予想以上に時間がかかったせいか
山の麓に辿り着く頃には、陽が随分と西へ傾きだしてしまった。

やばい×2、もたもたしてたら暗くなっちゃうよ〜。
アクセル全開! 大急ぎで標高を上げた。

しかし、ある程度登った所で
ふと右手(西方)に目をやれば
越えてきた山々の景色がなかなか綺麗だった。

無視できずに、車を降りて一枚 ...(^-^;


地元では、こういった場所が少ないんですよ...。


無事に標高を上げ終え
まずは、ノコノコが沢山湧いていたヤナギの群生地へ滑り込んだ。

そそくさと長靴に履き替え、湿原の中へ潜入。
手際よく、クワガタが集まる樹々をチェックしてみたが
残念ながらムシの気配は全く感じられなかった。

ここはもう、落ち着いたのだろう...。

もはや夕刻なので
樹々の表面を触ってみると、とてもひんやりしていた。
標高を上げてきただけの事はあり、秋を通り越して、むしろ冬の冷たさを感じた。


では3週間前、アカアシが沢山湧いていた橋のたもとはどうだろう...!?
少々車で移動して
丈の低いヤナギ群の前へ降り立ってみた。

おお、いた!
こんなに冷たくなった空気の中に
まだ息づいていた!

目の前の枝先には、2頭の
アカアシクワガタの♂がしっかりとしがみついていた。

あぁ、嬉しいなぁ...
今年君らと会うのは、これで最後になると思うけど
これまで色々と楽しませてくれて、ほんと、ありがとう♪

(せっかく出会えたのに、肝心な生態写真を撮り忘れてしまった... (^
.^ゞ 何をしてんねんな、も〜っ!!)


しかしまぁ、麓にノコノコがいたのだから、アカアシがいても、うなずける話ではあった。
(ちなみに先輩は、ここから離れた場所で、本日から約2週間後の10/17までアカアシを確認している。)

おっと、ヤバイ×2!
感動に浸っていた所だが
気がつけば、陽が沈む一歩手前であった。
最後にもう一箇所だけ見ておきたいポイントがあるので
先を急がねば!


郷の秋ですねぇ...。


猛烈な勢いで車を飛ばし
最後は、アカアシが実るヤナギの元へ。。
完全に陽が落ちる寸前に、ギリギリの所で辿り着く事ができた...(^-^;

よし、早速チェックに取り掛かろう。

先程撮り忘れた生態写真も、ここで撮ればいい。
そう思っていた。
それぐらい、いて当然のポイントだった。

いつも通り、まずは樹の下に立って枝先を眺めてみる。
しかし、暗くてよく見えない。
そこで例によって、思い切り樹の幹を蹴飛ばしてみた。
しかし、いつもの軽快なパチパチ音は、全く聞こえてこなかった...。

あぁ、ここも終わったんだぁ...。

時間帯が遅かったからか?
いいや、そうではない。
今年はもう既に、終わっていたのだろう。

そう実感すると
ちょっとわびしい気持ちになった。
残念だが、このポイントの退き際を、見送る事はできなかった...。

しかし今日は
ここまでやってこられて本当に良かったと思っている。


また来年来ますよ。


随分暗くなってしまったが、シャッター速度を落として
樹々の間から覗かれる
遠くの景色を撮影。

“ また来年の夏、お世話になりますよ☆ ”

空の色が、オレンジ色から紫に、そして群青色に変わった。
さてと、挨拶を済ませたこの辺で、引き上げる事にしよう。

本日は、様々な想いを胸に、されど、思い残す事など一切なく
気持ちよく帰路につく事ができた。



〜 後記 〜

高速を飛ばして
19:00過ぎには、無事に帰宅。

テレビでは、本日イチローが一気に3安打をマークした様で
80年以上破られなかった年間257安打のメジャー記録を塗り替え
259本を達成し、大騒ぎだった。
凄いなぁ〜。

で、私の採集行の話だが
今日は、シーズン中、随分世話になった多彩なフィールドへ再び足を運び
必死で生き抜いているムシ達の姿から
夏の余韻を、少しだけかいま見る事ができた。
しかし、青々と活気に満ちていた筈のヤナギの葉は
冷たい風に吹かれ
随分と黄色く、細くなり、やつれた印象が強かった。

それら状景は、少々もの哀しく、同時に美しく映った。
郷に訪れた秋の風景は、そこで一夏を過ごした私に
様々な感動の想いを与えてくれた。

今回は、今更だが2004年夏の〆という事で
行っておいて本当に良かったと思う。

アカアシクワガタの写真だけを撮り忘れてしまったが
彼らは新たな夏へ向けて、これから越冬に入るのだろうし
また来年会えるのだから、まぁそれも良しとしようではないか...☆


〜 主な確認種 〜


●水生半翅類 : カメムシ目コオイムシ科
 タガメ 114♀♀♀♀
●フトカミキリ亜科
 カタシロゴマフカミキリ
●ヒョウタンゴミムシ科
 ナガヒョウタンゴミムシ
●クワガタムシ科
 アカアシクワガタ 12♂♂
 ノコギリクワガタ 11





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