採集履歴

“2005年 春のカミキリ採集” 編(6)



05.05.15 (Sun)
 Hill 「少しずつ、経験を積みながら」 
                                                                                                  

昨日に引き続き今日も採集だ。
行ける時に、どんどん行っておこう。

特に狙いはないが
カミキリムシが好みそうな場所へ赴き
できるだけ多くの未採集種と出遭ってみたい。

正直なところ、カミキリ採集をする明確な目的はまだ定まっていないが
少しずつ経験を積む傍ら
県内に棲息する多くの種類の事や、先輩が築いた足跡の深みを再認識するにつれ
単に自己満足の採集だけでとどまることなく
少しでも、今後何かしら役に立つ資料づくりができればと
思うようになったのは確かだ。

午前中が土砂降りだったので、雲行きは怪しいが
昼になると、時折太陽が見えかくれしだし、じわ〜っと暑くなってきた。

今日は、ミヤップの郷へ行ってみよう。
13:40の出発となった。


〜 まずはシナノから 〜


実家の事情で、ちょいと出発が遅れた...(*_*)
いつものような寄り道は一切せず、ミヤップの郷までまっしぐらだ。

広い山中の某所へ辿り着くと
早速車を降りて写真を一枚。

あぁ、いいなぁ...。

ここへ来ると、本当に田舎を感じる。



喉かなところでしょう?


毎年夏になると
この辺の民家の横には、決まって薪炭材が積まれるので
そこへ各種カミキリ(特にトラカミキリ類)がフィーバーする。

今年はこれまで以上に注意して見ていかねばなるまい。


それでは、お楽しみの採集に移ろう。
まずは、ここに生えているウメの樹なんかはどうだろう??

気になったら、すぐにビーティングだ。


気になったら、叩きましょう。


ぬぉ?

いきなりシナノクロフカミキリがポトリポトリと落ちてきた!

どうやらここに湧いているようである。

では、彼らの自然体の写真でも撮ってみようかな...

そう思って、じ〜っと、枝葉の隅々を眺めていくと...

いた!
シナノクロフカミキリ

でも小っちゃいし、光量が足りないので
私のデジカメの性能では、これが精一杯だった...(^-^;


-シナノクロフカミキリ
-Asaperda agapanthina agapanthina
BATES, 1873



葉の裏側で、昨日見た個体と同じく、死んだ様に休んでいた。
そしてやはり、摘めば慌てて動き出す面白い子だった。


細くて、素朴なスタイルが気に入っています。



〜 未採集種をゲッツ♪ 〜


ちょいと移動して、ミヤマクワガタが沢山いる
ポイント「A川」へ。

カミキリ的な視点で見ても、この辺はとても魅力的な環境だと思う。

沢があり、綺麗な水が流れ
豊富な植物が、各々遠慮なく、元気に生い茂っている。


弟がビーティングをやってますね。


いつもクワガタを採っている
ボコボコクヌギの横には、マメ科の白い花が咲いていた。
弟が軽くビーティングしてみると...

むむ!?

めちゃめちゃ小っちゃいカミキリムシが落ちてきたぞ。

一瞬他のムシに見間違えたが
よ〜く見れば、明らかにフトカミキリ亜科の体型をしている。

かつて採集したカミキリムシの中で
最も小さいと断言できるだろう...(@_@)

後ほど図鑑で調べてみると
やはりフトカミキリ亜科のヒシカミキリであることが判明。

やった!
今日も未採集種をゲット♪


-ヒシカミキリ
-
Microlera ptinoides
BATES, 1873



しかし、こりゃぁ展足するのが大変そうだな...(^-^;
とは言え、それはそれで燃えてきちゃう性分なんだけどね... (^ ^ゞ


その後、私も近くでビーティングしてみる。

おや?

これまた小さいカミキリムシが落ちたぞ。

まさか... やった!
これは
コジマヒゲナガコバネカミキリだ♪


-コジマヒゲナガコバネカミキリ
-
Glaphyra kojimai
MATSUSHITA, 1939



名前の通り、上翅が小羽でしょ?
それ以外の体のつくりは、完全に普段見慣れているカミキリ亜科と言える。
こういったタイプのカミキリの採集は初めてだったので
とても嬉しい。 ラッキ〜☆彡



〜 若いんだから...(^-^; 〜


それにしても、この辺りの自然度というのは非常に高い。
別に、植生を調査し、その度合いを数値化して他と比べた訳ではないが
肌でそう感じるのだ。

そういや昔、「農村地域における緑地保全計画のための基礎的条件に関する研究」
なんて論文を書いたんだっけ... 思い出すなぁ... (^ ^ゞ

そんな事を考えながら
ジャングルでも彷徨うかのように心躍らせ
少しずつ歩を進めていった。

しかし、そんな楽しい散策中に
こんなはがゆい出来事があった...。

突然、お年寄りの集団に遭遇。
どうやら、この辺の山村に住まわれている方々らしい。

何やら、電柱のようなでかいポールを、渓流をまたいで
対岸まで運ぼうとしている様だ。

こちらが構わずビーティングを続けていると
集団の一人が、いきなり声をかけてきた。

 “お〜い!そんなところで毛虫なんか採ってんじゃないよ!”

半ばご立腹の様子である。
なんて失礼な...(^-^;
しかし、ここは押さえて

 “毛虫じゃないっすよ〜☆”

と返すと

 “若いんだから、こっちへ来て手伝え!”

と言う。。。
良く分からないが、やむを得ず川岸まで渋々歩み寄ってみる。
すると今度は

 “ほら、黙って突っ立ってないで、さっさと下へ降りてこい!”

と言う。
え゙ぇ〜!?
今日はじいちゃん達みたいに長靴を履いてないから
川へ降りたら足が濡れちゃうじゃん...。

…と、そこで仲間の親切なお年寄りが

 “あんちゃん!大丈夫だよ。俺ら元々農家上がりだから力があんだ!”

とフォローを入れてくれた。

助かった...(^-^;
一時はどうなる事かと思った。。。

こういうのは、田舎で良くあるシチュエーションだが
何ともやりきれない気分になる...(^-^;



〜 土壇場で、また追加 〜


さぁ、気を取り直して採集を再開しよう!
あまり時間はない。

前回、行く手を阻まれたバリケードは側道から回り道して何とか通過...。
更にその先で出現したバリケードは、勝手ながら一瞬移動させていただき強引に通過... (^-^;

もはや、前進する事しかできませんよ... (^ ^ゞ


前方に見える橋を渡ってみましょう。


これまでグネグネと並走してきた
渓流をまたぎ
小高い山を一気に登ると
夏に世話になった別のクワガタポイント「橋桁」に到着した。

しかし今日は、いつもの雑木林ではなく、その向かい側にある
ミズキの花が気になる。
当然、すかさずビーティングだ。



ミズキの樹は、成績が良いんですよ。


おっと!
昨日初採集したばかりの
セスジヒメハナカミキリ
北の山地にいた子は、この辺にもいるらしい...。



-セスジヒメハナカミキリ
-
Pidonia amentata amentata
BATES, 1884



とりあえず、標本用に累計2頭目をゲット♪
今後、もう少し確保しておきたいところだ。


と、そこで...

ん?

急にポツリ、ポツリ、雨が落ちてきたぞ??
気がつけば、いつの間にか空が暗くなっている。
大丈夫だろうか...??

そう思うやいなや...

ザザザザザ〜!!

来た〜っ!とてつもない夕立である。

急いで車の中へ撤収しようとした。

ところが! (@_@)

幸か不幸か
樹々に覆われた林道を通過する際
道端に、とても気になる白い花樹を発見してしまった。

どうしよう...
しかし、見てしまった以上、スルーは良くない。
これは叩いて行かなければ... (^ ^ゞ

幸い木陰なので、何とか夕立の直撃は免れる事ができそうだ。

足早に歩み寄り、手際よくパシパシと枝を叩いてみると...

を゙っ!?

あっさりと、カミキリが落ちてきたっ!

うおおお、やったぁ!
土壇場で、未採集のカミキリをゲットである。

後ほど図鑑で調べた結果
ツヤケシハナカミキリであった♪


-ツヤケシハナカミキリ
-
Anastrangalia scotodes scotodes
BATES, 1873




〜 流れに乗って、終了 〜


こんな天候のもとでも、着実に未採集種を追加している。
ありがたい事だ。

さて、車の中で雨宿りしながら再び移動しよう。
相変わらず前だけを見て進んでいくと...

あら?

何と行き止まり...(+_+)

今度はバリケードではなく
続いていたはずの林道が、完全に途中消滅していた。

仕方ない、あえなくUターン... (-_-;
結局、先程強引に通過したバリケードの所まで延々と引き返すはめになった。
こんな所まで無理に入ってくるからである... (^ ^ゞ

まぁ、得るものは得たんだけれどね☆

しかし、なくなっちゃうんだぁ... あのルートは。
寂しいなぁ...。


その後…

山の中をウロウロ徘徊しながら、暫く様子を見ていたが
雨がやむ気配は全くなかった。

残念だが、これ以上は手も足も出ない。
採集の続行は不可能である。


これではもう、探せません...。


帰ろう...。
無理をして、ねばる必要などない。

これも “流れ” なのである。
それに従うのが利口だろう☆



〜 後記 〜

17:00に実家へ帰宅。

採集時間は、正味1時間30分程度だったが
降ったりやんだりの、不安定な天候のもとでありながら
ヒシカミキリコジマヒゲナガコバネカミキリツヤケシハナカミキリ
の3種類の未採集種を追加する事ができ
大変満足している。

特に、
コジマヒゲナガコバネカミキリは、これまでに採集した事がない
上翅が小さいタイプだったので嬉しかった。

これからも、時間さえあれば積極的に出かけ、焦らず、少しずつ歩を進め
時には勝負をかけ、時には楽しみを先延ばしにする...
そんなマイペースな採集を心がけて行きたい。

千葉へ戻った後
今週末に採集したカミキリムシを、原色図鑑と照らし合わせながら
久しぶりに、るどるふ先輩へ助け船を求めた。
ムシの同定は、楽しいけれど、非常に時間と労力を要する。
ここのところ、頻繁にそれを体験してみて、良く分かってきた気がする。


〜 主な確認種 (持ち帰り頭数) 〜

●ハナカミキリ亜科
 セスジヒメハナカミキリ ×1
 ツヤケシハナカミキリ ×1
●カミキリ亜科
 コジマヒゲナガコバネカミキリ ×1
●フトカミキリ亜科
 シナノクロフカミキリ ×3
 ヒシカミキリ ×2





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