採集履歴

“2006年 H市調査” 編 (4)



06.03.11
Sat) Plain 「1年ぶりに竹林散策」 
                                                                                                  

引き続き、地元H市内を散策しようと思う。

今回は、未採集のタケトラミキリを狙ってみたい。
タケトラカミキリは、その名の通り
昨年確認したベニカミキリ、ハイイロヤハズカミキリと同様に
タケをホストとするカミキリムシだが
県内での採集報告例は決して多くなく
H市内における公的な記録については現在の所見当たらない。

とは言え、竹垣や竹竿、竹箒などの竹製品を食害することで警戒される
大変有名なムシでもあるので
竹林を丹念に探せば、手が届かない相手ではなさそうな気がしてならない。
これまでの記録が少ないのは
単に、鹿行地区周辺での調査が充分になされてこなかっただけの結果ではなかろうか??
だとすれば、尚更何かしらの手がかりを掴んでおきたいところだ。

そんな訳で、今日のテーマはタケである。


〜 ほぼ一刀目にして 〜


ポカポカとした春の陽気だ。
これから昼過ぎにかけ、益々暖かくなるだろう。
うれしいねぇ〜♪
時計の針は11:00、荷物をトランクへ移して、意気揚々とエンジンをかけた。

家を出て、2分ほど走り
市内の環状線を下ってくると
ほっとな温泉の近くに、幸先良く竹林が見えてきた。

これまで全く気づかなかったが、結構な規模である。

よし、早速ここで様子を見てみよう。


とりあえず、この辺から始めましょう。


おとうと と二人、軍手をはめ、斧を携え、まずは林全体を概観してみた。

生えているのは、主に建築材料などに用いられる「マダケ(真竹)」と
その他、工芸品などの材料にも用いられ
何と言ってもタケノコが美味しい「モウソウチク(孟宗竹)」である。


生えているのは、タケだけではありません。


タケの他にも、最近着目しているタブノキの若木が数本目に付く。
この辺りでは、タブノキとタケが混生しているケースは多い。

にしても、本当にあちこちに生えているもんだ。
決して珍しくはない事が、最近になってようやく分かった。... (^ ^ゞ


また、ハイイロヤハズが入りそうな、表面にマダラ模様が入った
古く、か細いタケ材を見つけたので、拾い上げてポキッと折ってみる。。

すると、芯の空洞部分からこんな幼虫の死骸がポロッとこぼれ落ちた。


カミキリムシの幼虫です... 多分 (^-^;


あ、カミキリの幼虫だ... よね??
何者かに体液を吸い取られ死んでいるが、おそらくそうだと思う。
だとしたら、きっとハイイロヤハズであろう。

同居人は、既にこの脱出口(写真)から出たに違いない。。


続いて、ちょっと薄暗い林の中に入って様子を見ていくと
急な斜面に、直径15cmぐらいのタケが立ち枯れていた。

枯れてから、何年ぐらい経過しているのだろう??

ちょうど青みが消えたばかりの様子だったので
まだ、それほど古くはないと思われる。。


上に2つ、下に1つ、脱出口も見えます。


ふふふっ♪

確か、こういうのに入ってるんだよね... タケトラカミキリって。

嬉しい事に、脱出口も沢山開いていた。
よく見れば、ベニカミキリの脱出口よりも、その口径が一回り小さい。

むむぅ... これは、もしかしたら!?

いきなりのラッキーなお膳立てに
ドキドキしながら斧を入れてみた。。

カコンッ!バキッ! とね... (^ ^ゞ

すると...

ん〜!?


ややや!?


まさかとは思ったが、いきなり来てしまった。。... ()
蛹室の中に所狭しと身を潜める、その繊細な姿形を見た瞬間に、確信が持てた。



タケトラカミキリChlorophorus annularis FABRICIUS, 1787



ひゃ〜!!(>_<)(>_<)(>_<)

やっぱいるんだよ、タケトラカミキリ

時間の経過と共に、どんどん感動が増してきた。

外界の光を浴びる事なくこの世を去った 無念な個体であったけれど
これは、大変貴重な資料である。

で、一回目の撮影終了後、早速本個体を蛹室から摘み出そうとすると...

うわわっ!

ここでちょっとしたアクシデント勃発。
つい興奮し過ぎて、竹筒の中に落としてしまった。(+_+) (*_*) (+_+)

あちゃ〜 (^-^;

しかしまぁ、そんなに焦る必要はない。
きっと、節目の部分に留まっているはずだ。

竹筒の表面に開けた穴を更に拡げ
数分後、 おとうとの手によって、“落とし物” は無事に拾い上げられた。

ふ〜、良かったぁ... (^-^;

では、再び写真を撮らせて頂こう☆
手のひらにのせて、シャッターを切りながら
あらためて本種独特の紋様と色合いを堪能する。。

う〜〜ん、いいなぁ♪
目的のムシが採れたときの感動は、何度味わってもいい!

わははっ... (^ ^ゞ 実に幸先良いスタートであった♪


その後、おとうと にも手伝ってもらいながら
同じ材からの、追加個体を狙う事にした。

こんなにも簡単に出てくるのなら
他にも成虫が入っているに違いない。


しかし、この姿勢はしんどいです... (^-^;


とりあえず、削りやすいように材を横倒しにしてみた。

表面にあけられた脱出口はこんな感じ。。ほぼ正円形に近い。



タケトラカミキリの脱出口です。


そして改めて、この長大材を削り始めた。
どこを削っても、食痕がぎっしりと詰められているようで
暫くは楽しめそうだ。

斧を入れ、皮を剥ぐたびに バリバリと音がたってうるさいが
付近には誰も住んでいないので、気兼ねなくできる。


〜 15分後 〜

しかしながら、これがまた 思ったより手こずるもので... (^-^;
削れど×2、なかなか手がかりが出てこない。

おまけに後程気がつけば、この材の半分近くは
カミキリムシの坑道を利用する、アリの巣と化しているではないか... (^-^;

で、時間と労力ばかりを費やした結果
最終的に確認できたのは、こいつを含めた二頭の幼虫のみであった。... (^-^;


幼虫なら出てきました。


くく〜っ、残念...。

ちょっと諦めがつかず、他にも脱出口があいた材を探してみたが
残念ながら見つかったのは、湿気を帯び、黒化が進んだ古いものばかり...。

試しに斧を入れても、みんな、もぬけの殻である。

少々くたびれ、本日の所はこの地に見切りをつけることにした。。


それにしても、前回のホシベニカミキリの時と同様に
ほぼ一刀目にして、成虫の残骸が出た事は非常にラッキーだったと言える。

やはり今回も、それ以後は成虫の足跡が全く出なかったわけだし...

初めに出なければ、それ以後、例え中に入っていたとしても
諦めて、スルーしていた可能性が大きいのだから。。

ホント、運が良かった♪

ここにはいる!
それを確信できただけで、今回の発見は非常に大きな手応えであった。



〜 片っ端から 〜


新たなフィールドを求め、まずは徒歩で移動を試みた。

着眼点は引き続き、タケである。

先程まで見てきた竹林の上(高台上)へ登ると
この辺で採れたタケを用いて作ったと思われる竹垣が
墓地や、小さなお宮を整然と囲っていた。

よく見れば、そんな竹垣にも小さな脱出口が散見される。

このサイズ... おそらくタケトラカミキリのものであろう。

よしよし♪


そんな中、おとうとがタブノキの倒木を発見。
近くには切り株もあったので、おそらく土地の管理者が伐採したものであろう。
とはいえ、まだ半分は生きており
青々とした葉をまとった枝が、数ヶ所から元気良く上方へ伸び、再生を図ろうとしているようだ。

これはいい。

所々に、カミキリムシの脱出口が見受けられたので
あえて枯死した部分を選び、斧を入れてみると
あっさりと、このような幼虫が3頭出てきた。


おそらく、ホシベニカミキリの幼虫と思われます。


頭の色が真っ赤である。
ノコの幼虫と同じで、成虫は真っ赤なムシになるのかな!?

わはは... (^-^;

冗談はさておき
大きさから言っても、この子はホシベニカミキリの可能性が高そうだ。

しかし、これ以上この材をいじるのはやめておこう。

まだまだ沢山入っている事ぐらい、容易に想像がつくが
まだみんな幼虫だろうし、余裕を持って、5月頃にもう一度チェックを入れてみたい。

今後のお楽しみと言うことで...☆彡


その後、車の所まで引き返そうと、竹林に沿った坂道を下った。

道中、足下に太いタケの切り株を見つけたので
何気なく、斧を入れてみる。。。

すると、ちょうど割れ目に蛹室が現れ
そこから真っ赤なカミキリムシが、ノソノソと這い出てきた。。(@_@)


あら、お久しぶりです☆


言わずとしれたベニカミキリ(新成虫)である。
大変元気で、時折羽を広げ、飛び立とうとさえする。
いやいや、春を感じさせますね〜♪
久しぶりに会えて、ちょっと嬉しかった☆


ベニカミキリPurpuricenus temminckiiGUERIN-MENEVILLE, 1844



その後も、車で移動しながら調査を続けた。
少しでもまとまった竹林があれば、漏れなくチェックを入れていく。。


目指している場所が、分かりますよね。


終盤に立ち寄ったここなんかは、とても雰囲気が良かったけれど
現場で発見されたカミキリムシの脱出口は皆
その形、大きさから考えてベニカミキリのものと予想され
残念ながら、タケトラカミキリのものらしき足跡は殆ど残されていなかった。

余談であるが、この林縁には小さな水たまりがあって
どういう訳か、金魚(和金)が沢山泳いでいた。... (^-^;


こういった場所を、4時間以上散策しました。


竹林を見つけては、片っ端からチェックを入れるという地道な作業を繰り返し
タケトラカミキリの棲息が予測される林も少なからず見出す事ができた。
その根拠となった確認材料は、やはりそれらしき脱出口である。

こうして見てくると、やはり彼らにも、林の位置やタケ材に対する好みがあるのかもしれない。

しかし、成虫および幼虫の姿を見ることは
本日最初の材から確認した個体以来、全くなかった。

近所に住まう方への迷惑を恐れ
材割りを遠慮した事も、その原因としては大きい... (^-^;

 
これがまた民家の横やその敷地内ほど美味しそうな竹林が分布するものなのである。
 いくら私がムシキチでも、さすがに不法侵入はできない。タケは用材にもなりうるし...。
 因みに竹林というのは、ある程度手入れされないと、一定の周期で死滅してしまうらしい。。


とは言え、「この辺りにはタケトラカミキリが生息している」 それを確信できたことが
くどいようだが、ホントに大きな手応えであった。

ふふふっ♪

大丈夫だ、しっかりと今後へ繋がりそうである。


ヘックショ〜イ!!ヘックショ〜イ... ショ〜イ... ショ〜イ...

さてさて、大きなくしゃみが竹林の中に こだまし始めた。
ここまで一度も記さなかったが
おとうとの花粉症が限界に達してきたようだ。

哀れなほどに、鼻水が大洪水である。
春先は、暖かくなってもこれがネックだ。... (^-^;

今晩彼は、父と仲良くお出かけの予定なので
あまり無理はせず、この辺でお開きにしよう。。



〜 後記 〜

今回は、ここの所ずっと気にかけていたタケトラカミキリの
H市内における生息を確認することができ
ホシベニの時と同様に、ほんとラッキーだった。
おそらく、新産地ではなかろうか??

脱出口は、ベニカミキリのものよりも正円形に近く、口径も小さいので
ある程度見極めがついた。
あちこち見て回った竹林での、その確認頻度から考えれば
本種は、市内の割と広い範囲で
少なからず生息しているものと予測される。

タケの材割りは、非常に音がうるさく近所迷惑になる可能性が大きいので
極力避けなければならないが
できれば、今後早い段階で生体を確保しておきたいところだ。

う〜む... いいね♪ カミキリ採集。
本格的に始めて、ちょうど1年になるだろうか??
本当に楽しい。
そして、これは前回からの繰り返しになるが、自己満足で続けてきた昆虫採集に
地元茨城における甲虫分布の把握という大きなテーマを持ち始めたことが
最近の、何よりも大きな収穫である。


〜 主な確認種

●カミキリ亜科
 タケトラカミキリ(死骸) ×1
 ベニカミキリ ×1





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