採集履歴

“2009年 近隣地区調査” 編 (2)



09.11.28
Sat) Plateau 「1頭の重み」 
                                                                                                  

今回は、近所にお住まいの先輩 Sさん、yanaさんから
フィールドへ ご一緒させていただく機会を賜りました。

Sさんは、水戸昆虫研究会が発足した当初から会の歩みを知る大先輩で
蝶やトンボに始まり、現在は ガガンボやシリアゲムシなど
人があまり調べないテーマに沿って、ご熱心に研究されています。
県内各地の記録や こだわりが感じられるムシの写真を添えた、多くの報文を残され
また、お住まい周辺の自然環境を 地域の皆様と共に 長年見つめていらっしゃいます。
今回は、そんな歴史が詰め込まれた 重みのある書籍のページをめくる機会も頂きました。

そして、これまでにも何度かご紹介している yana さんは
ゲンゴロウやアメンボ等、水棲昆虫に お強い方です。
とは言っても、調査・研究分野は幅広く、最近伺った話だけを取り上げても
鳥やキツネ、トビケラ、キノコなど、あらゆる生物に目を向けていらっしゃるようです。
また、随分お若いのに 大変謙虚で親切なお人柄に 心から敬服しています。
あくまで私個人の主観ですが、ムシを集めるコレクターというより
専門的に調査・記録することを より重視するスタンスには
憧れる面もあります。 色々と、見習わなければいけませんね... (^ ^ヾ

そんな水戸昆の先輩方と同行できる今回、目標に設定したムシは 憧れのオサムシです。
日本全国 分布は広い種類ですが、棲息地が局所的で そう簡単には見つけられません。
もう 12月目前... 既に越冬体勢に入っているはずです。
いったい どんな環境に潜んでいるのでしょうか!?

近隣地域における自然の一端を学べる好機となりそうで、大変楽しみです。



12:00過ぎに、とある水辺のほとりで Sさん、yana さんらと合流しました。

今日は、いささか風が冷たいものの、かろうじて太陽が顔を覗かせています。
暫く天候が優れなかったので、とても運が良く思えました。

ただ残念なことに... Sさんは、地域活動の一環で
急遽そちらの会議に出席しなければならなくなりました。

なので、今回は 1時間程度しかお話ができません。。

しかしながら、以前から是非一読してみたかった素晴らしい資料を拝見させて頂きました。
郷土を愛する皆様の、熱心な調査活動の結晶ともいえる内容でした。

短い時間ではありましたが、充実した楽しいお話もさせて頂きました。

師走の月も近づき、業務繁多な折のことと思います。
わざわざ 現場へ来てくださったことを、感謝いたします。m(_ _)m


さて、お目当てである オサムシの話題に移ります。。

今回は、yana さんのアドバイスで 起伏のない平坦なエリアを巡ることになりました。
周囲の状況は、クリなどの畑地、雑木林、草原、荒地、時折湿地など・・・
ありきたりな要素ばかりですが、広い場所では、それらが一望できそうです。
実際、R地区には あまりないシチュエーションといえます。
普段 オサ・ゴミをチェックしている、湿原や谷津田周りの林内とは全く異なりました。

そして着目していく点は、こんなところ...


苔生した地表部です。



程よく保湿性がある苔の裏側に、越冬個体が潜んでいるのだそうです。

 ※越冬巣をつくる都合上、ある程度 締まった地盤がよく
 
モグラが通ったフカフカな場所などは、NGとのことです。

ここのところ、土手ばかりを崩してきたので
何だかとても新鮮な気持ちになり、ワクワクしてきました。

早速、条件にあった苔をめくってみます (思ったより簡単にめくれました)。

すると...

出ました!真っ赤な エサキオサムシ (ツクバクロオサムシ) です。


ツクバクロオサムシ
Carabus albrechti tsukubanus
T
AKAMI et ISHIKAWA, 1997



続いて、カントウアオオサが 2頭。


カントウアオオサムシ
CarabusOhomopterusinsulicola kantoensis
ISHIKAWA et UJIIE, 2000



めくった苔は散らかさず、全てもとの位置へ埋め戻していきます。
(根こそぎブロックのように剥がれますので、手間はかかりません。)

その後も、光沢のない渋みあるエサキに...


カラーバリエーションが豊富なようです。



グリメタなエサキ。 次から次へと出てきます。

すぐに、現場は ツクバクロオサ、カントウアオオサなど
歩行虫が濃いエリアだということが分かりました。


何となく、めくる場所も分かってきました。



お目当てのオサムシは、まだ見つけられてませんけど... (^ ^ヾ
少ない種類ですから、そう簡単に行くものではないでしょう。

出逢えれば ラッキー、それぐらいに思ってましたから
焦りは全くありませんでした。

でかっ!

そんな驚きの声を発した yana さんの方を見れば
姿形がアリジゴクにそっくりでも、体長が 3倍ほどもある大きな幼虫を
左手の上に置き、じっくりと眺めていらっしゃいました。
カゲロウの幼虫でしょうか??
やはり、興味の対象が幅広いです。(^-^)

時には、仕事やムシに纏わる雑談に花を咲かせながら
苔めくりと、移動を繰り返し...
あっという間に 3時間ほどが過ぎていきました。。


今日は、yana さん号について行きます。



で、最終的には、このような場所へ辿り着きました。。


造園屋さんが、苗木を育てているようです。



なるほど... ところどころに しっかり苔が根付いてますね。。。


日没の時間を考慮し
ここに全てをかけましょう。



残された時間が限られてきたので、すぐに チェック体勢へ移りました。

やはり、ここもエサキが濃いようです。
いくらでも現れます。


今年はエサキが当たり年なんでしょうかねえ〜(笑)


などと、冗談めいた言葉を交わしていると...

お! 3番目の役者、トウホククロナガオサムシが顔を見せてくれました。


大丈夫、ここは絶対にいますよ!順当に行けばそろそろ出番の筈です。


あくまでも ポジティブに、根拠のない言葉を発した その直後のことでした。。


あ... いましたよ!


yana さんが、歓喜の声を上げました。


ホントですか!?


ドキドキしながら傍へ歩み寄ると...



OH!!



うわぁぁ... 本当にいました!(>_<)



セアカオサムシ
Hemicarabus tuberculosus
(DEJEAN et BOISDUVAL, 1829)



なんて小さく、そしてキュートなオサムシなのでしょうか☆
事前に yana さんから伺っていた通りです。



美しいムシを見て 久しぶりに感動しました☆



真っ赤な前胸に加え... 凹凸ある上翅にはゴールドの縁取りが入っています。
実におしゃれな配色... そして彩です。 思わず一目惚れしてしまいました♪... (^ ^ヾ

本種は、比較的 乾燥した草地や荒地などに生息し、ミミズなどを補食しています。
(これまでの採集方法は全く無縁なやりかたでしたね... (^ ^;;)

茨城県では、絶滅の恐れがある応急種に指定されています。

小柄とはいえ、ズシリと重たい 1頭でした。


現場では、ささやかながら 紅葉も見られました☆



憧れのセアカオサを確認できた途端に、お腹がいっぱいになってしまいました... (^ ^ヾ
とりあえず今回は、そんな喜びの気持ちを大切にしておきたいです。

yana さんは、ホット一安心されたご様子。。

もはや、これ以上の結果は ありませんよ。
衝撃的な、素晴らしい光景を見せていただき ありがとうございました☆... m(_ _)m



さぁ... これからどうしましょうか??

せっかく久しぶりに お会いしたので
このまま解散というのは ちょっと名残惜しいです。。

ここで、yana さんがタイムリーな提案をくださいました。

いいですね!勿論 ついて行きますよ♪



とことん ついて行きますよ... (^ ^ヾ



残されたわずかな時間は、気分を入れ替えて
この時期でも見られる 別の越冬虫を見せてもらうことにしました。


やや暗い植林内をくぐり抜け... やってきたのはクリ畑です。
傍らには湿原の一部が浸入しています。。



明るい クリ畑です。。



お!ものの数分で、yana さんが 目的のムシを見つけたようです。


撮影中の yana さんです。



レンズの先には、何とも繊細なイメージのトンボが静止していました☆

細い枝先にたたずむ 彼女の名前は... ホソミオツネントンボと言うそうです。
活動期には、青みがかった美しい色合いに変化します。

冬が近づくと、風除けになる林に囲まれた 陽だまりに集まり
越冬体勢に入ると、雨や雪などの気象状況に応じて 様々な姿勢をとるようですよ。

へぇ... おもしろ〜い。。


ホソミオツネントンボ
Indolestes peregrinus
(RIS, 1916)



トンボが越冬する例は珍しいそうですが (他にオツネントンボなど)
本種自体は、あくまで普通種とのことです。

ただ、初めてそれを見聞きする私にとっては
全てが新鮮そのものでした。

色々と勉強になりますね! o(^-^)o



その後、この林の中で 暗くなるまで談笑を続けました... (^ ^ヾ

16:45... 日没の頃を迎えました。
さすがに これ以上歩き回るのは、ちょっとナンセンスかもしれません。。

ただ、このまま帰ろうにも
平坦な土地を縦横無尽に走り回ってきたせいか
現在位置が全くつかめません。

弱りましたね... (^ ^;;

結局...

yana さんに、大通りまで先導して頂きました。
恥ずかしながら、最後まで甘えてしまいました。... (^ ^ヾ

あっという間でしたが、大変有意義なひとときを 過ごすことができました☆



〜 後記 〜


17:20 頃に、帰宅しました。

今日は、久しぶりに yana さんにお会いし
楽しく、ためになる お話を沢山交えながら、フィールドを散策してきました。

yana さんは、前日までの約一週間を 出張先の青森で過ごされていたそうで
(実は、出張先から今回のお誘いを頂きました。m(_ _)m)
大変 お疲れのところだったと思いますが...
暗くなるまで、あたたかくエスコートしてくださり 本当に感謝しています。

おかげ様で... 憧れていたキュートなオサムシと 出逢うことができました。
それはそれは重みがある、1頭でした。

また Sさんからは、近隣地区の自然をまとめた書籍を拝見させて頂きました。
地元愛に溢れた、歴史を感じさせる一冊です。
掲載された多くの記録を参考に、今後も地元 R地区の自然や生き物を眺めていこうと思います。
勿論、こちらで棲息しうる歩行虫の可能性をも模索してみたいです。

この度は、生涯想い出に残りそうな良い機会を賜り、ありがとうございました。



〜 主な確認種

●オサムシ科 Carabidae
 カントウアオオサムシ
 ツクバクロオサムシ
 トウホククロナガオサムシ
 セアカオサムシ





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