調査履歴
“2011年 北の照葉樹林” 編 (1)
11.08.28 (Sun) Plateau 「スダジイの古木@環境保全地域めぐり その2」 |
R地区における ベーツヒラタカミキリの確認を機に このところ、茨城県全域に残存する スダジイ林の分布に興味が湧き始めました。 照葉樹林をキーワードとする 茨城県指定の環境保全地域は とりわけ R地区に集中しているものの 決して限定されているわけではありません。 少ないながら、県北にも存在しています。 これは無視できないでしょう。 因みに... 沿岸部においては、さらに北の福島県でも 照葉樹林帯が散見されます。 あちらで考古学を研究されている方は 古きスダジイ林の形成過程を想像し 縄文時代の遺跡の分布と照らし合わせ スダジイ・ラインと称しているようです。 (ご存知の通り、小学時から考古学マニアなもので... (^ ^ヾ) 現在よりも、気温・水位がずっと高い時代に形成された樹林の名残が 北方でも まだかろうじて見られるということですね。。 県外へ脚を伸ばす順番は、先々の話となりそうですが... いずれはムシの分布にも繋げられると、面白いかもしれません。 |
これまでに現地調査した R地区における数々の照葉樹林は
その殆どが自然もしくは緑地環境保全地域としてカバーされていました。
現場では、地域の名称と特色を示す古びたブラックボードを見つける度に
「こんなところまで調べられていたのか... 」 と、毎回驚かされたものです。。
逆に言うと、環境保全地域を目安に歩くことで
他の地においても、主要な照葉樹林の分布を概ね把握していけそうな気がします。
興味は尽きません。 早速お出かけです。
今回は千葉の借家から、一気に茨城県北まで移動しました。
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利根川を渡ります。... @11:25 |
実家を経由して、更に北へ。。
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県北の山並みが見えてきました。... @14:36 |
目的地付近へ到着しました。。
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そして、すずき文字の地へ... @15:02 |
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ひとくちに環境保全地域とは言っても、いきなり現場を特定するのは至難の業です。。
行政の資料には、概ねの所在地しか記されておりませんので。。
地域にお住まいの皆様の声や、地図上の神社マークなどを頼りに
目的地を探り当てていきます。。
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最終的には、こんなところへ 入ってきました。。 |
砂利敷きの道が途切れそうになったところで... ありました!
お馴染みの、ブラックボードです。
これを見つけられただけで、ちょっとした達成感があります。
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こんな谷津田の奥なのに... 早くもボードが新調されてました。 |
小高い丘の上を目指して、数百メートル登ってゆきます。
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参道の途中に、鮮やかな鳥居がありました。 |
次第に、辺りにはスダジイの巨樹が現れました。
特に、こちらが最も古いと思われます。
立派なものです。
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写真では、「でかさ」 が伝わらず残念です。。 |
更には、モミも現れました。
何気に、古い食痕も見られます。
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数少ない、モミの大樹です。 |
古い資料を見ると、かつては茨城県にも
かなり沢山のモミの群落があったようです。
しかし、1971年発行@文化庁 の植生分布図を眺めると
既にその頃にはほんの一握りまで縮小されています。。
ある時期に、よほど伐採・植林をしたのでしょう。。
かつて僕は、人知れぬエリアで まとまったモミ林を幾つか見てきましたけれど...
残念ながら、そこでは古い食痕すら見つけられませんでした。。
むしろ、車の通りが多い林道際や
人里近くにポツンと残された古いモミの樹幹に
こういったかつての食痕が見られるケースが多いです。。
若樹の、比較的新しい食痕はまだ見たことがありません。
話が脱線しました。
さてさて、神社の境内へ到着です。
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右手の石碑が倒れていました。。 |
古いボードは、まだこちらにあったのですね。。
昭和57年(1982年)指定... 文面は全く同じです。
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撤去されておりませんでした。 |
ここも、漏れなく震災の影響を受けたようですが...
古い木造建築物は、時折その頑丈さを見せつけます。。
このエリアでは、丘の斜面に、スダジイ古木が沢山見られました。
是非また訪れたいと思います。
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麓から、1キロメートル以内ですから ライトを灯せそうです。 |
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では、次です。
この町には、指定地域が もう一ヶ所存在します。
チェックしておかないと。。
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右か左か... 直感でハンドルを切ります。... @16:52 |
少々手こずりましたが、民家に挟まれた路地を右往左往しつつ
2つ目のボードを見つけることができました。。
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新調されていたのですが 既に 大分傷んでいますね。。 |
湿度が高めで、下草も蔓延り...
車を降りた途端に、藪蚊の群れが押し寄せてきました。。
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確かに、上方には照葉樹が見えます。 |
藪蚊を振り払いながら、小刻みな階段を登っていきました。
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踏み面が狭いので、足元には気をつけないと。。 |
境内へ登りつめました。
民家に囲まれている丘ですが
暫らく誰も寄り付いてなさそうな雰囲気です。
植生はスダジイの老樹が多く、次いでアカガシも見られました。
ボードにはモミの記述もありましたが、ほんの 2、3本と言ったところです。。
そして... どこもかしこも、とてつもない藪蚊の量でした。
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お堂の襖が 一枚見えません。。 |
小規模な林ながら、とても魅力的なエリアでした。
しかし、ライトを照らせば近所迷惑になりそうですね。。
スキンガードが何本も必要そうです。。
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環境保全地域のチェックを済ませましたが、せっかくですので更に歩を進めます。
こちらにも、古い社寺林が見られるのではないかとやってきました。
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綺麗な神社です。 |
しかし、スダジイやケヤキの大樹が 7本あった程度で
“ 照葉樹林 ” と呼べる程の様相は窺えませんでした。
とは言え、それらが老齢樹であればこそ
かつては現場が照葉樹林帯であった可能性を想像できるから
頼もしいものです。
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付近の民家の入口にも、スダジイの古木が。。 |
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その後も、暗くなるまで社寺林を探索し続け
更に もう1つの照葉樹林を確認できました。
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ムシの探索は、次回へ持越しです。。 |
〜 後記 〜
今回は下見に徹しましたが、かなり楽しかったですよ。
R地区に比べれば、それぞれの樹林の規模は小さかったものの
いずれにも、古き時代の確かな名残りがありました。
もう、8月も終了間近ですが
明日、明後日にでも 試しに ライト・トラップを仕掛けて
どのようなムシが棲息しているのか、様子を見てみたくなりました。