調査履歴

“2011年 R地区調査” 編 (33)



11.09.02
(Fri) Plateau 「スダジイの古木@環境保全地域めぐり その4」 
                                                                                                  

9月になりました。
北方だけではなく、
R地区の照葉樹林も
引き続き調査しておきたいと思います。

「かつて訪問した環境保全地域へ再び。。」
というスタンスになりそうですが
ベーツヒラタ という フィルターをかけながら
改めてスダジイの古木を見直す予定です。

成虫採集の時期から大分遠のいておりますけど...
大切なことは、近年における分布の把握です。

棲息の証が認められれば、申し分ありません。



夏休みが終わり、新学期が始まりました。
まだまだ残暑が厳しいですが、気持ち新たに参りましょう。

夕刻... まだ陽射しが残る、実家への帰り道...
高台に残された、とある照葉樹林を思い出し
およそ4年ぶりに立ち寄ってみました。


ここを忘れていました。



スダジイの大樹が豊富に見られる神社です。


お馴染みの、ブラックボードです。



歴史を刻んだ古木には、貫禄があります。


傷を負いながらも...
どっしり、ゆったりと生きています。



神社の裏手には、巨大な立枯れも見られました。



湿度が高めで、腐朽も進んでいます。



まずは、鬱蒼とした林の中の立枯れを 入念にチェックしてみました。


カミキリムシの食痕や羽脱孔は
見つかりませんでした。



続いて、適度に陽があたる 風通しの良い場所でチェックです。。



やや古そうですが...



ありました!

カミキリムシの羽脱孔です。
それも、形状からベーツヒラタの可能性が濃厚です。


ノコギリカミキリの孔より、扁平です。



念の為、根際の窪みに堆積した腐葉土を掘り返してみたところ...

むむむ!やはり間違いありませんでした。

ベーツヒラタの、右の上翅です。


この樹林における、明らかな棲息の証です。



一口に立枯れと言っても、周囲の環境は様々です。
お好みのシチュエーションは、他の多くのカミキリムシと同じみたいですね。。

更に、20m程離れた場所にある立枯れでも、沢山の羽脱孔が認められました。


孔のサイズは、大小様々です。
体長の幅が広いのでしょう。



ここも、分布地の一つとしてプロットできます。


付近には、空き家になった古民家がありました。
南房総の港町で調査した 独特の造りを思い出します。



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日没までには、まだ時間があります。

続いて... かつて ホシベニカミキリを確認したり
歩行虫を調査した沿岸部へ。。


砂地に形成された照葉樹林です。



周辺の植生は、スダジイの他に タブノキが多く、モチノキなども見られました。
それと... 先程の現場もそうでしたが、こちらはより一層 藪蚊が多く、苦労しました... (^ ^;;



ここへは何度も訪問しています。



自重に耐えられなくなったスダジイが、保護されていました。


震災の影響で、周辺の石造なども倒壊していました。。



狭い境内にも、古いスダジイが散見されました。


他の甲虫による羽脱孔を確認することはできました。



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最後に、SINMATI の裏手方面。。


ここの神社を撮るのは、初めてです。。



5年以上前に、入口付近のタブノキで まだ見ぬ ホシベニを探したものです。
結局、ここでは見つけられなかったですけどね... (^ ^;;


スダジイが メインですね。。
相変わらず、錆付いたボードです。。



R地区における スダジイの豊富さを、再認識させられました。


大樹と呼ぶに ふさわしいものばかり。。



参道の周りに、30本ぐらい並んでいました。。


ここでも、羽脱孔が見出せるでしょうか。。



ありました!

古いものですが、朽ちて乾燥した部分に
紛れもないベーツヒラタの羽脱孔が空いています。


ノコギリカミキリの孔も、別に認められました。



新しい孔は見られませんでしたが
半枯れの太い枝が樹上に沢山確認できたので
ひょっとしたら、まだ棲息しているかもしれません。。

ここは、来年の成虫の活動期に、改めて見直さなければなりませんね。



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一度帰宅して、この日に着用していた びしょ濡れの衣類を洗濯した後に
改めて先程の現場へやってきました。

勿論、☆を見つけた神社です。

yasu から借りていた灯火セット一式が、たまたま車のトランクに積みっ放しだったので

せっかくですから、試してみましょう。。

もしかすると、まだ生き残りがいるかもしれません。

20:00 きっかりに、ライトを灯しました。



さて、どうでしょうか。。



先日県北で行ったナイターでは、飛来する甲虫の少なさに
夏の終わりを実感させられましたけど...

こちら(南部)では、まだそれなりに余韻が感じられました。


何頭か飛来した、コクワちゃんや。。


コクワガタ
Dorcus rectus rectus (MOTSCHULSKY, 1857)



R地区では、ゴマフ、ナガゴマフに比べ、個体数が少ない カタシロゴマフカミキリ。。


カタシロゴマフカミキリ
Mesosa hirsuta hirsuta BATES, 1884



目下短報を投稿中ですが、このR地区でも見られるようになった ミチオシエなど。。


トウキョウヒメハンミョウ
Cylindera kaleea yedoensis
(KANO, 1933)



ツクツクボウシです。。
小学生時、すばしっこくて なかなか捕まえられませんでした。
その他、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシと... この辺のオールスターが飛来しました。

あ... 出現や撤退が一足早い、ニイニイゼミが抜けてましたね。。



よほど明るく、そして沢山いたのでしょう。。
ライトの周りでは、合唱が始まってしまいました。。



22:30 まで、2時間 30分 粘ってみましたが
残念ながら、ベーツは飛来しませんでした。
さすがに、時期が遅かったのかもしれませんね。

まぁ、やれるだけのことはやっておかないといけません。。

これで納得、☆が確認できただけでも 御の字です



〜 後記 〜


スダジイの立枯れから、沢山の羽脱孔が認められ、さらにその根際からは
大型の♂、小型の♀、それぞれの部分的なパーツが掘り出されました。
本種の棲息を裏付ける、充分な証といえるでしょう。

これからの時期は、少しずつ そして着実に本種の分布を把握していければと思います。

やはり、R地区における太くて貫禄のあるスダジイ群と
ベーツの存在感は、良くマッチしますね


..

ベーツヒラタカミキリ

Eurypoda batesi GAHAN, 1894





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