調査履歴

“2012年 R地区調査” 編 (42)



12.02.24  Plateau Plain 「見直し・開拓調査 + 幼虫観察 その2」 
                                                                                                  

突然 春が舞い込んだような、暖かな陽気に恵まれました。
日中は 14℃ まで上がり、3月中旬並みとのこと。。

この日は、久しぶりに 大好きな山を目指したかったのですが...
前夜は 4:00 過ぎまで起きていたので、早起きができず断念しました。

気を取り直し、R地区調査編を繋げて参ります。
やるべきことは、山積みです。

朝食を抜いて早めの昼食をとり、11:00 に家を出発しました。



まずは東側へ向かいます。。

いつものように、とある谷津田の周囲から チェックを始めました。
ここは、今月 2度目の訪問となります。

写真では いささか殺風景に映りますが
台地の斜面には、照葉樹林がわずかずつ残されています。




今回は高枝用の切り鋏を持参してますので
高所にぶら下がっているアケビの枯れ枝も 難なく手繰り寄せることができました。

そして、無事に カッコウメダカカミキリを確認。
このエリアの見直し調査を 手堅く完了させました。


Stenhomalus (Stenhomalus) cleroides BATES, 1873



せっかくですので、ついでに 他の枯れ枝もチェックしてみました。

細長い食痕を辿っていったところ、蛹室からカミキリムシの後脚が出現。

誰だろう??

部屋の主は、ヒメクロトラカミキリでした。
県内全域に分布する、個体数の多い種類ですが
こんな見つけ方をすると、何だか嬉しいものです。


Rhaphuma diminuta diminuta (BATES, 1874)



更に、クスノキ科の枯れ枝を覗いてみます。

薄い樹皮の裏には、食痕がびっちりです。

こちらは誰の痕でしょう。。




出ました! オレンジ・ラインの幼虫@フトカミキリ亜科です。
でも、以前のとは ちょっと違うなぁ。。

今回は、T字型というか... マッシュルームの断面のような、そんな模様です。




勿論、飼育して経過を見たいと思います。
外見がそっくりなだけに、興味深いです。
比較要因が出てくると 楽しみも増しますね。




続いて台地上へ出たところ、
路傍に マツ枯れを見かけました。

こういうのがあるんですよねぇ... かなり沢山。。
時期を見計らえば、マツノマダラカミキリなども見られます。
やはり、無視はできませんね。。




そして、ぐ〜んと 西側へ。。

とある路地に入ると、地図上でも把握していなかった
興味深い神社を見かけました。

周囲には背の高いブロッコリーが沢山見えます。




かなり太くて、陽当たりが良いスダジイの部分枯れでは、幾つかの羽脱孔が見つかりました。

やっぱりね... 直下に堆積していた腐葉土を掘ってみると、♂の頭部も。。





なおかつ、樹皮の裏側には 真っ赤な影を発見!
ペリッと剥がしてみると、ベーツヒラタカミキリの♀の死骸でした。
案の定、ボーベリア菌にやられていますね。

ここは黒です。 またひとつ ▲プロットが増えました。


Eurypoda batesi GAHAN, 1894



14:00 になり、気温が ぐんぐん上がってきました。
空には雲ひとつなく、とても気持ちが良いです。

この水田地帯を突き抜けるのは、今月だけで 3度目になります。
さすがに今回は素通りで... と思っていたのですが
高所にぶら下がったフジの枯れ枝が気になってしまい、それだけチェック。。

なるほど、ワモンサビでしたか。。 この線もありますね。


Pterolophia annulata (CHEVROLAT, 1845)



続いてイヌマキの生垣です。 が、気になったのは 骨組みとなる竹材の方です。
予想通り、タケトラカミキリの羽脱孔が見られました。
やや古いものですが、この辺りにも確実に分布するのでしょう。




その直後に、またしても知らない神社が現れました。 いやぁ、あるものですね。。

狭い境内には、極太のスダジイが何本も生えていました。

早速 樹皮の隙間や根周りなどを入念にチェックしましたが
残念ながら羽脱孔、死骸の確認には至らず。。

ベーツヒラタは夜行性ですので、照明に飛来する可能性もあります。
近隣の自販機小屋の下も、残骸が見つからないものかと、くまなくチェックしました。
しかし、ここも ペケ×。

まぁ、そんなに簡単には行かないでしょうね。。

いずれにしても、ここにはプロットの可能性を感じます。 夏季にもう一度訪れてみたいです。

近所にお住まいの老夫婦に、この神社の名称などを伺う機会もありました。
この日は、実りが多いです。




そして... 先日見つけておいた、ヤブニッケイの成木があるポイントへ辿り着きました。




今回は、幸運にも地主さんの了解が得られたので
敷地へ入り、積み上げられた伐採枝の山を拝見できました。

樹種は色々とありましたが、その中に、びっちりと食痕が走る一本の材を発見。。
枝先についていたのは、三脈が目立つ ヤブニッケイの葉です。
香りも独特なので、間違いありません。




う〜ん... これは怪しい。。

すぐに確認された幼虫も、見たことがない姿形をしていました。
サイズといい、カミキリ亜科であることといい
ずっと気にかけていた “ あれ ” ではないかと 期待が膨らみます。

勿論、幼虫が入っている材は 何本も採集させて頂きました。




冬季だというのに、何だかできすぎな気がしますね。

16:00 になり、家路に向けて折り返しに入りました。

しかし、気になる場所へは 制限時間一杯まで道草をする スタンスです。。

まずは、とある お寺の前で エンジンを ストップ。
お墓の周りに残された、巨大なブロッコリーに吸い寄せられました。
見事なスダジイが、何本か混じっています。

いいなぁ... ここも初訪問です。
広場があるので、灯火を仕掛けることも可能ですね。。




更に歩を進めると、昨夏に訪れた環境保全地域の一部が崖崩れしていました。

何かしらの危険を避けるためでしょうか...
倒れたタブノキや クスノキが、何ヶ所か切断されていました。
良く見れば、キブシなども見られます。

残り少ない自然緑地が滅びることは残念なことですけど
この地域の照葉樹林に棲息するカミキリムシ相を概観するには
好都合な場所になりそうです。

夏に再訪しなければなりません。





陽が沈みかけてきました。
最後に、気にかけている ブドウ棚をチェックしに向かいます。

右の写真は、道中の お屋敷に生えていたヤブニッケイです。
忘れないように。。




で、こちらがそのブドウ棚になります。

昨シーズンのブドウが、干乾びながら未だに残されている状況からすると
暫らくの間、放置されているようです。





ムシの羽脱孔が見られましたが、ところどころから糞も噴出していますので
トラカミキリのものではなさそうです。

いずれにせよ、こういった農薬処理されていない栽培ブドウは無視できません。



さて、17:30 になりました。 この辺で〆括っておきましょう。




帰宅後は、採取した材の保管準備をしたいと思います。



〜 後記 〜


当初は大好きな山へ向かう予定でいましたが
春を思わせる陽気の中、R地区でフルに時間を使い切りました。
冬季とは言え、沢山の収穫があり とても贅沢をした気分です。

見直し調査は順調ですし
新たなポイントの確認や、期待の幼虫の発見などは
これからの活動の励みとなりそうです。
R地区調査が益々楽しくなってきました。





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