調査履歴

“2012年 R地区調査” 編 (44)



12.03.12
12.03.15  Plateau Plain Wetland 「見直し・開拓調査 + 幼虫観察 その4」 
                                                                                                  

R地区調査編の備忘録を続けて参ります。

春が近づくにつれ、見えるものが増えてきました。
そして、自部屋に保管される 材飼育箱(袋)の数も
かなり増えてしまいました。 まだまだ増えそうですが...



一つでも多く、結果が出てくれれば嬉しい限りです...



12.03.12


この日は、N台地の西側を調査してみました。

早速見つけたのは、三脈の葉を有する ヤブニッケイ@クスノキ科です。
長らく気にかけているカミキリムシが、好んで入るのですよね。。

かつてから どっぷり定着していることを予想していますが
ここでは食痕を見出すことができませんでした。




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台地上を流していくと、香取神社を見かけました。
まだまだ あるものですね。

お堂の裏手には、巨大なスダジイの古木が倒れていました。
かなり腐朽 ( 赤枯れ ) が進んでいます。
ベーツの死骸を探してみましたが
ここでは見つけられませんでした。

樹林と称せるだけの規模が足りない気もしますね。。
とりあえず覚えておきたいと思います。




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そして実家の近く... アカマツのある場所へ。。
R地区の内陸部になります。

こちらについては、今年中に しっかりと コメントしておかねばならないので
本格的に、材料集めを始めることにしました。

案の定、幼木群は枯れていました。




現場の地主さんは、全て植えたものと仰っておりましたが...
肥沃な土地には、マツは馴染みません。

やがてマツが衰弱すると、マツノマダラカミキリが群がります。
マツ枯れの主要因となる、マツノザイセンチュウと
その運び屋による被害は、R地区でも甚大です。

食痕だらけの材は簡単に見つかります。
しかし、幼虫の個体数は少ないようです。

幼虫は、樹皮下形成層をめぐる段階から競合するので
羽化脱出する個体数は、かなり限定されるそうです。




ある程度 新鮮な枝の折れ目を見ると
一度は開いた坑道に、しっかりと栓がされていました。

フトカミキリ亜科らしく
細くて繊維状に刻まれた材が詰められています。


幼虫が入っている可能性が高いですね。
持ち帰りましょう。





この後には、海岸線に広がる長大な砂防マツ林を 転々としながら
大量に材を確保して帰宅しました。


※材の経過を見たところ、12.05.20 から マツノマダラカミキリ が羽化脱出し始めました。

採集してきた幼虫の数に比し、羽化脱出する個体数の割合が著しく低下することは
千葉昆の伊藤先生も仰っておりましたが
僕も その後、沢山の材飼育を経て はっきりと実感しました。
このことは、かなり以前から 幾つかの論文で 立証されているようです。





..
♂の標本写真を掲載します。
なかなかのフォルムですよね。

♂♀を問わず、材一本から
一頭という割合で
羽化脱出しているようです。

成虫採集の難しさが囁かれますが
若木が多い林、日中においては
陽当たりの良い林縁木
そして夜間の見回りが
効率良く採集するための
キーになりそうな気がします。

タイミングが良ければ
案外見つかるかもしれません。
Monochamus alternatus endai MAKIHARA, 2004



.. 小美玉市生物の会の
Sakurai会長さんより
カゲロウの調査を目的として
夜間 R地区へ訪れた際に
本種を見かけたそうです。

写真を賜りました。
クロマツの樹幹にいた
♂♀です。
ありがとうございました。

2012.08.13 Sakurai さん撮影



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12.03.15


3月4日に引き続き、R地区というより
そもそも 茨城県レベルで調査不足と思われるカミキリムシを

探してみたいと思います。

報文提出のリミットは迫っておりますが、課題は山積みです。





ここは、かつて yana さんが 先駆的に訪れていた池です。
ハンノキが並ぶ湿地と、照葉樹林の斜面の間を辿ります。





着目すべきは、今回も こちらのキブシです。




キブシといえば、ここ R地区では...
トワダムモンメダカ、コジマヒゲナガコバネ、ヘリグロチビコブ などの
可能性がありますが、どれも未記録です。
まずは、前 2種。 特にトワダムモンメダカカミキリに拘らねばなりません。

本県では山地から数例の記録がありますが、決して山地限定の種ではありません。
平野部では、これまで完全にノーマークだったと言えます。

前回は高密度の食痕が見つかりましたが
今回は傷んだ枯れ枝の中から幼虫が顔を出しました。

いや〜、小っちゃいですね!




それにしても、頭部が カッコウメダカカミキリと ソックリです。
同じメダカカミキリ属なら、当然と言えば それまででしょうけど...
これで、トワダムモンメダカで間違いないと思う気持ちが 益々膨らみました。

新成虫の確認には至りませんでしたが
前回 ( 3月4日 )に持ち帰った材から正解が出ることを祈ります。





さぁ、これからが始まりです。
本種が、いわゆる普通種であることを証明するには
このエリアのみならず、広い範囲で見つけておかねばなりません。

あわせて、コジマヒゲナガコバネも R地区においては存在して然りな種ですから
結果を出しておきたいところです。


※3月4日に回収した材の経過を見たところ、12.04.05 に
トワダムモンメダカ、コジマヒゲナガコバネ両種が多数羽化脱出しました。



続いては... せっかくですので、ハンノキの方も見ておきたいと思います。





枯れ枝を折ってみると、ハナカミキリ亜科の幼虫が現れました。
実に特徴的な頭部です。





更に、肢があることが なお “ ハナ ” を裏付けますね。。
R地区の広葉樹食いですから、おそらく ツマグロハナあたりではないでしょうか??

※予想通り、12.04.30 に ツマグロハナカミキリ が羽化脱出しました。




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最後に、2月27日、3月11日にも訪れている 照葉樹林の伐採地です。




樹林の面積が広いので、伐採された材種も多いのですが
今回は、メインのタブノキ@クスノキ科 に着目します。




暫らく探索中のカミキリムシは、特にヤブニッケイを好むようですが
一般的にはタブノキに入ることが知られています。

しかし、R地区にはタブノキがあまりにも豊富なため
これまでは、どこを探していいものやら
非常に的が絞りにくい状況でした。

前報にも記したとおり、自然林の伐採は残念なことですが
このような機を無駄にはせず、徹底的に調査しておかねばなりません。





カクレミノの幼木の傍で、早速太い倒木を割っていると
材芯部から真っ赤な甲虫の死骸が出てきました。

一瞬、まさか!? と思いましたが、納得のホシベニカミキリでした。
脱出できなかった個体でしょう。 かなり古いものですね。。

本種はタブノキの生木を好みますので
R地区における個体密度は、茨城県内では最も高いです。

しかし、それが証明されたのも つい何年か前のこと。。
いかに このエリアが調査不足だったか... ということになりますね。。
鹿嶋市出身の Fuda くんは、小学生の頃から認識していたようですよ。

因みに、現在の北限記録は北隣の福島県まで及んでいるようです。




さてさて、諦めずに堅いタブノキ材を削っていると...

お! これは ビンゴじゃないかな!? 

そうですよね... やはり いたんですよね。。(>_<)

こちらも死骸ですが、現段階では それだけで充分でした。

いや、素直に嬉しかったですよ。
大分前から予測していたことですし
正直なところ、ホッとした気持ちになれました。




ならば、食痕の入った タブノキ材を見つけて持ち帰らねばなりません。




ありました!

2月24日に見つけたヤブニッケイ材と同様に、樹皮がひび割れし
その下から高密度の食痕が見えます。




しかし、宙に浮いた材の切断作業には苦労しました...


揺れまくる不安定な足場 ( 伐採木上 ) では、力がうまく入らないのですよね... (^ ^;;

こんなふうに、ノコギリが挟まって抜けなくなってしまったり...

( ヘタクソですね〜 )

予備のノコギリもあったので、運良く難を逃れることができました。





とりあえず、車のトランクにこれぐらいの材を確保しました。




帰宅後、縁側に並べて改めて撮影。。




食痕だけでなく、切断面からは 見覚えある カミキリ亜科の幼虫も、顔を覗かせました。
付近からは死骸 ( 写真右下 ) も出ましたし、もう間違いないでしょう。




あとは 5-6月の羽化脱出期までに、いかに棲息範囲を北へ延ばせるか...
それが R地区 在来型の種であることを 少しでも証明するためにできる
せめてもの努力となります。



〜 後記 〜


以上、2日分 の備忘録となります。

今回も材採に徹しました。
幼虫や死骸の確認によって、既に種が判別され始めましたが
僕のスタンスは、分布調査に重きをおいておりますので
もう少し同じ作業を繰り返す予定です。

勿論、確保した材や幼虫の経過については、改めて記せればと思います。



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追記。

※トワダムモンメダカカミキリ、コジマヒゲナガコバネカミキリ、トゲヒゲトビイロカミキリ
・・・などが無事に羽化脱出しました。 詳細は本文中にとして記しています。

※ タブノキ材から、トゲヒゲトビイロカミキリ が羽化脱出しました。
  ( 12.05.26 撮影 )
箱の右の方に 2頭見えますが、この後 数十頭出てきました。
 
Allotraeus (Nysina) rufescens (PIC,1923)

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※ R地区における本種の採集データは
日本の東北限記録となりましたので
月刊むし 499号に 掲載されました。
記録地の範囲は、継続調査により
更に広がるものと予想されます。





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