調査履歴

“2012年 R地区調査” 編 (50)



12.06.
10 12.06.26 Plateau Wetland 「見直し・開拓調査 その9」 
                                                                                                  

6月分の見直し・開拓調査です。

各月、そして各週ごとに
やっておかねばならないノルマが移り変わります。
流れを見逃さないように 努力したいところです。

今回も、主なものだけですが
カミキリムシの生体写真を並べます。

詳細については、きちんとした資料を作成した末に
論文を書きますね。



12.06.10


長らく降り続けた雨も、前夜でお仕舞いです。
日曜日は快晴に恵まれました。




近所の坂道を 軽快に滑り降りながら、調査再開です。


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まずは、道路拡幅工事のために伐採された樹々の様子を
眺めてみることにしました。




おっと!ホシベニです。

強い雨に打たれたせいか、かなり衰弱していました。
触角もヘロヘロです。。( 羽化不全かな?? )


Eupromus ruber (DALMAN, 1817)



現場から持ち帰った タブノキ材より 既に 1♂1♀が羽化脱出しているので
新規プロットとは行きませんが、やはりこの鮮やかな赤色は映えました。


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続いては、かつて yana さんが見つけていた池です。。




だんだん蒸し暑くなってきました。




今回見つけた カミキリムシは、アトジロサビぐらいでした。。

左腕の傍に アオヤンマが浮かんでいたので
手にとって眺めてみました。


Aeschnophlebia longistigma SELYS, 1883



いやぁ... 綺麗ですね!



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先日、自宅保管中の材から マツノマダラカミキリ が出始めたので
アカマツの幼木群も覗いてみました。。

お!タイミングが良かったみたいです。


Monochamus alternatus endai MAKIHARA, 2004



しかし、この木も 半ばやられちゃってますね... (^ ^;;


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12.06.11


既知産地ですけど、カラムシの群生を眺めながら帰宅しました。




葉上には、ラミーカミキリが。。
今年も会いました。


Paraglenea fortunei (SAUNDERS, 1853)



茨城に入りこんで、もう数年が経ちました。
既に県北域まで分布を広げているようですが
こちら方面では、新たな発生地をキャッチできていません。。

努力はしているつもりですけど
一人の目では、やはり限界がありますよ... (^ ^;;

ただ もしかすると、太平洋、湖、 2本の大河が
分布拡大の障壁になっている可能性は ありますね。。。

これだけの水系に囲まれていると
他エリアからの影響を受けにくいことも また事実です。


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12.06.24


久しぶりに里帰りした yasu くんを乗せて
朝からクリの花を掬いに行きました。


勿論、伐採地にも目を配りましたよ。




とある和小屋の片隅で、カマキリの赤ちゃんが 次から次へと 出てきました。
タイムボカン・シリーズの、ヤッターマンに出てくる 小型メカ のようです。。。




クリを掬う 第一の目的は、近年いなくなってしまったカミキリムシを探すためだったのですが
残念ながら、この日には見つけられませんでした。

しかし、これまで R地区では記録が少なかったキマダラミヤマカミキリが各地で確認されるなど
調査した甲斐はありましたよ。




他にも、再認識したことは あります。




この様に、下草刈りなどの 人工管理が行き届いた クリ林では...




バッタ、バッタと 幹や枝が折れていきます。。




強い風が 吹いたわけではありません。




近年全国的に減少傾向にある シロスジカミキリの仕業です。
↓は、yasu くんが見つけました。





付近では、♀が産卵していました。


Batocera lineolata CHEVROLAT, 1852



この様に、樹皮が薄いクリは産卵管が形成層に近付くので
生まれてくる幼虫も安泰なのです ( 幼虫は栄養がある形成層から食します )。


Batocera lineolata CHEVROLAT, 1852



しかし... 薪炭材の需要の低下により
枝打ちや萌芽更新が留まった雑木林のクヌギやコナラは
幹がどんどん太く成長し、樹皮も厚くなり、♀が産卵しにくくなったようです。

また、化学肥料の導入により、かつての様な 落ち葉さらいや下草刈りもなくなったので
本種が産卵するのに好まれる環境 ( 風通しの良い林縁部、周辺に林床空間がある... など )

も著しく減少しました。

本種の産卵痕から滲み出る 樹液を好む昆虫が減少した理由も
ここにあると推察されています。

しかし、管理された クリ畑での被害は、返って甚大なものがあるんです。
ここ R地区も、例外ではありません。


ゴマフ、セミスジコブヒゲ などのカミキリムシの他には
クロハナムグリや、とりわけムツボシタマムシなどの甲虫が沢山いました。


Chrysobothris succedanea E. SAUNDERS, 1873



こちらのタマムシは、割と広範囲で見られます。


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12.06.26



6月の下旬。 そろそろいい頃かなと思い
以前見つけておいた テイカカズラの様子を見に行きました。




テイカカズラは、照葉樹林の林床にかけて良く見られる蔓性の植物です。
R地区らしい ありのままの様相ですね。。





花の形が特徴的なので、この時期になれば 存在に気付けます。




軽く掬ってみると... あれ? トゲヒゲトビイロカミキリではないですか。


Allotraeus (Nysina) rufescens (PIC,1923)



見上げれば、タブノキが。。 もっともな結果でしたね。




材採の結果を以って、茨城県における棲息事実を立証したばかりですが

野外活動中の個体を見つけたのは、今回が初めてのことでした。
また新たにプロットを加えることができます。



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それならば、A高傍の伐採地付近の様子が気になります。。
材採の結果により棲息事実は確認済みです。




トウネズミモチの花に、沢山のムシが集まっていたので ガバッと掬ってみれば...




おお、やはり入りました。 触角が長い♂です。
昨夏までは、7月の末日〜8月にかけて探していたので
効率が悪かったわけです。。


Allotraeus (Nysina) rufescens (PIC,1923)



気がつけば、足元の下草にも。。


Allotraeus (Nysina) rufescens (PIC,1923)



頭部に花粉がついていたので、僕が落としてしまったのかな??
やはり、以前から普通に見られる種類だったのかもしれません。


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先程のテイカカズラでは目的のムシが見つけられなかったので
もう 1ポイントだけ立ち寄ってみました。




プロペラのように 5つに割れる花が特徴的です。
部分枯れしている枝などを 入念にチェックしたのですが
小さくて毛深いカミキリムシは ここでも見つかりませんでした。

今更 隠す必要など ありませんね。 イボタちゃんのことです。
一般的には暖地性の種類と認識されていますが
もう東北地方でも見つかっているようです。
ここR地区では、10年程前に Fuda くんが何頭か採っています。




カラムシの群生にも、まめにチェックを入れないと。。




在来型の種、分布を拡大してきた種...
その辺の区別ができれば申し分ありません。



〜 後記 〜


以上、4日分の R地区調査 備忘録 になります。

トゲヒゲトビイロカミキリが、野外活動期に入りました。
本種をはじめ、ベーツヒラタカミキリや ホシベニカミキリなど
R地区ならではの、照葉樹林型の暖地性種を
しっかり把握していかなければなりませんね。

また、きちんとした資料を作成するためには
カミキリムシの害虫としての側面や、ラミーなどの分布拡大種
そして、ケブカトラのような人為的な移入の怖れについても
触れるべきでしょうね。。

これらを視野に入れ、ずっと以前から準備を重ねてきました。

最終的には、しっかり纏めたいと思います。




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