調査履歴

“2013年 北の照葉樹林” 編 (5)



13.07.21
, 23-(Sun)  Coast 「北限探索@ホシベニカミキリ」
                                                                                                  

ホシベニカミキリ
Eupromus ruber (DALMAN,1817) は
タブノキを始め、クスノキ、ヤブニッケイなどの クスノキ科を寄主とする暖地性種である。
関東地方南部における分布は広く、近年では 市街地や海浜公園の植栽からも
多数発生しているようだが、一般に北限と考えられている茨城県では
温暖な南東部沿岸域に記録が偏っている。

今回は、茨城県と福島県の 県境で暮らし始めている yasu くんが模索し始めた
本種の北限調査を お手伝いさせていただいた。

彼は、既に その県境付近で 1♀を採集 (↓写真 ) しているだけでなく
実際の北限は更に北方にあり
およそ50年ほど前に東北の福島県から 1♂が記録されていたことも把握している。

県境付近の棲息環境と、タブノキの切断面に現れた幼虫の坑道 および得られた♀

一方僕は、一昨年の秋までに、阿武隈地域沿岸部における照葉樹林の分布調査に努め
その際には、被災地で暮らす青年から温かいご協力を頂いた経緯もあるので
これを機会に、何とか 積み重ねた経験を活かしたいところである。



13.07.21
-(Sun) 
                                                                                                     
 
.. 朝 8:00 に yasu くんと 茨城県北某所で合流しました。
  
午前中は、山地の天然林で
この時期に 見ておかねばならないポイントを
回っておきました。

ノルマのようなものです。
  
そして、午後からは 本題の沿岸部へ。。
あちこちを 徘徊しながら
17:00 頃には 福島県へ到りました。。

ここは、かつて 地元に暮らしている
とても親切な青年から教えて頂いた
照葉樹林の ひとつです。

当時は スダジイが主眼だったので
記憶に留めておく程度でしたが...
今回は、まさに ストライク!な環境
と言えるでしょう。。
  
林縁には、樹液が滲み出ている タブノキが
沢山 見かけられました。

カナブンや、コクワガタが 群がっています。

すぐに、ここにはいる! と確信しました。
  
排糞孔からは、カミキリムシの食痕が噴出
しています。
これは、上方の枝から 零れ落ちたものです。
 
高所には、そんな様子が より一層 確認できました。

いるのだとすれば... いや、いるのでしょう。
個体密度は かなり高そうです。

しかし、残念ながら この日には成虫の姿が
確認できませんでした。

死骸でもいい!と思い
付近の 街灯や、自販機の下なども
入念に探してみたのですけど...
19:00 をまわり、日没を迎えたところで
諦めることにしました。

本当に 残念。。
 
いきなり 玄関席の写真で スミマセン。

せっかくなので、通り沿いにある yasu くんの家に寄り
Kanae ちゃんに会ってから帰りました。
 


13.07.23-(Tue) 
 
善は急げ!ということで
早くも 2日後に、同じ場所へ出かけることにしました。

確かな証拠を 得なければ。。
 
この日、yasu くんは勤務日でしたが
後のことは、すべて 任せてくれました。
 
昼前に到着です。

いいですね... 陽が照ってきました。
 
高木が 多いところです。
 
樹液が出まくっています。
こんなのばかりです。
 
タブノキのほか、カシ類なども自生しています。
 
独特の産卵痕 ( 写真 : 左 ) もあちこちに。。

右は... 何でしょうか? ちょっと中途半端です。
 
“ プチ齧り ” も 沢山。。
 
かなり高いところにも。。
 
やはり産卵痕が。。

ここまで 濃い場所なのに...
一昨日は 何故見つけられなかったのか
不思議でなりません。。

この日は、クワガタ採集の要領で
細めの樹幹を キックしてみました。

すると... ポトリ。。

  
あれまぁ!

いきなり ♂が落ちてきました。

あっさり 目的達成です。

現場到着後、ものの 20分でおこった
出来事でした。

勿論、まずは yasu くんに電話しましたよ。
Eupromus ruber (DALMAN, 1817)
 
せっかくですので
もう暫く 周囲を散策してみました。
   
たまたま... でしょうけど。。
あまりにも見事な保護色となっている
ナガゴマフカミキリ を見つけました。

面白〜い。。
Mesosa longipennis BATES, 1873
 
あ! あんなところにも 。。
大型の ♂です。
 
13:00 頃でしたけど...
2日前の苦労が嘘のように、続々と見つかりました。

写真の中央にも 一頭。。
 
どうやら、羽化不全のようです。
 
こちらは... タブノキの葉を食する、♀です。
 
少し離れて、樹林の全景を撮っておきました。
沿岸部に自生する、照葉樹林です。
 
手堅く 棲息地を確認できたので
まずは ホッとしました。

少し移動して、海水浴場の駐車場で
お昼を食べることにしました。

すると...
遠くから、何やら ( 写真中央 ) 近づいてきます。。
 
衰弱した子猫でした。。
たくましく 生きていけるでしょうか。。
 
砂浜では、復興作業が続いていました。

自然度の変化を考慮すれば
整備の加減も、重要なようですが。。
 
午後からは、探索の幅を広げ
更に北へ 脚を伸ばしました。
 
海岸線に沿って、順次 “ みどり ” を
見つめてきましたが...

岩場が多く、これ以上の手がかりは
容易く 見出せそうにありませんでした。
 
いわゆる “ 公園緑地 ” を見つけたので
植えられたタブノキを チェック しましたが
かなり入念に 防虫されているようで
食害の痕は一切見られませんでした。
 
建築物などの 痛々しい 状況も映りましたが
あまりにもリアルなものは 伏せておきます。



〜 後記 〜



福島県では、およそ50年ぶりとなる ホシベニカミキリを採集できました。
R地区調査時代から 本種の棲息域を模索し始めたのは yasu くんでしたので
良い節目ができたのでは ないでしょうか。
ニセノコギリ、トゲヒゲトビイロ に続き、また一つ 暖地性種の北限探索ができて
良かったと思います。

 

..
Eupromus ruber (DALMAN, 1817) / 左から 北茨城産♀、福島県産♂、♀

具体的な内容は、月間むし No.513 号に掲載されました。
今回の筆頭は勿論 yasu くんで、僕は共著として バックアップさせていただきました。

“ 勢力拡大中の昆虫たち ” を テーマにした 本号には、日頃よりお世話になっている 伊藤先生や 大桃先生
昨年 僕が書いた報文について 勿体のない お言葉をくださった 永幡先生の記事なども掲載されており
とても嬉しく思いました。 よろしければ ご覧になってください。

 



※採集記目次へ