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2007年1月2日
筆者は,由緒ある神社の参拝を兼ねて,
戦前に ヨコヤマヒゲナガカミキリが初採集
されていたという山の頂を目指した。
尾根筋を伝う登山道は険しく,山岳信仰の
修行を目的とする禅定道を兼ねていた。
その周囲には寄主となるブナが確かに散見
されたが,若木が多く,貫禄ある老木は
ほとんど見当たらなかった。
それよりも,スギ,ヒノキの大木や,アカガシ
を主とした常緑樹,苔むした巨岩ばかりが
目立ち,冬季とはいえ,ヨコヤマヒゲナガの
存在感をイメージできぬままだった。
つまりこの段階では,かつてより随分縮小した
であろう自然林の表層部しか見えてなかった
のである。
写真:
神社の参拝を兼ねて,弟と尾根筋周辺の
森林を下見した (2007年1月2日撮影) |
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2014年1月6日
茨城県内各地でヨコヤマヒゲナガの新たな
産地を見出した経験を踏まえ,改めて件の
禅定道を訪れた。
たとえ難題であろうとも,この地における
本種の「健在ぶり」を確かめてみたかった
からだ。
写真:
7年ぶりに現地を訪問. 斜面には植林のほか
アカガシを主とする常緑樹林が目立った
(2014年1月6日撮影) |
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この日は,人目が届かぬ斜面を徹底的に
徘徊した。
その結果,残された森林内で,樹齢を
重ねたブナの数々や,少ないながら本種の
ものらしき羽化脱出孔を発見し,
「まだ生き永らえている」 ことを悟ることが
できた。
写真:
急斜面のシデ類の中には,樹齢を重ねた
ブナも散在した(2014年1月6日撮影) |
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凄いなぁ…。
少なくとも今から80年もの昔には,鉄道や
自動車などの交通手段はおろか,道路すら
満足に存在しないだろう。にもかかわらず,
これほど険しい山中に赴き ヨコヤマヒゲナガ
を採集していたなんて。
それを思うと,現在の生息事実を確認し,
埋もれてしまいそうな歴史的出発点の一端を
後世に語り継ぎたくなった。
写真:
太いブナの根元では,ヨコヤマヒゲナガの
ものらしき羽化脱出孔を確認した
(2014年1月6日撮影) |
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晩夏が近づくと,ヨコヤマヒゲナガカミキリは
活動期を迎える。
禅定道は宗教登山の色彩が濃くなり,
白衣にわらじを履き,杖を持った修行者が
歩き始める。
月明かりの下で耳を澄ませば,静穏な山中に
力強い太鼓の音がこだまする。
2014年以降,筆者は神社の宮司さんから
許可をもらい,相変わらず禅定の邪魔に
ならない急斜面に身を潜めながら
ヨコヤマヒゲナガの息づかいを探り続けた。
しかし,新たな羽化脱出孔や産卵痕すら
見つけることができなかった。
2015年以降は,夜間のライトFITを3度
試みたが,発生木も分からぬままで的を
絞れず,いずれも失敗に終わっている。
写真:
雨天. 神社の傍で 日没を待つ
(2016年8月7日撮影)
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