採集履歴

“2006年 H市調査” 編 (3)



06.02.19
Sun) Plain 「赤い彗星の尻尾を掴む」 
                                                                                                  

昨日は久しぶりに、あちこち動き回ったので
午前中は、ゆっくり実家でくつろいでいた。

外は冬の陽気で、太陽も見えず ちょっぴり寒い。

今日は午後から あまり無理はしない程度に
市内へ散歩に出てみることにした。

このように、ここの所近場へ まめに出かけるのは
近い将来、報告してみたいと思っている
茨城県産カミキリムシの採集リストの中に
願わくば、少しでも地元の記録を増やしておきたいからだ。

茨城県における、これまでの公的な記録(確認されている種類のリスト)を見ると
県北域を中心とした採集報告が多く
どちらかといえば自然度が低い、東・南域のものは極めて少ない。

よって、これまでノーマークであった私の実家周辺なら、例えそれが普通種の採集例であっても
貴重な資料となりうるのである。

以前にも同様のことを記したが
当たり前のことを、正確に記録していくこと... これは重要である。

あらかじめ、2〜3h の時間を設定し
12:00過ぎに家を出た。


〜 お勉強 〜


適当に車を走らせていると
「■■緑地環境保全地域」 と書かれた立て看板を見かけた。
■■地区とは、私が通っていた小学校の、隣の学区にあたる。

地元の自然環境を把握しておくことも
大事なお勉強の一つなので
ちょっと寄り道しておこう。


最近定番の、看板写真です。


で、これがその立て看板。

結構古いなぁ ... (^-^;

鉄枠が錆び付いている。

ふ〜ん... 昭和58年指定か。。

以前(
05.09.04)、カクレミノが群生していた湖岸地域の立て看板は、昭和53年指定だった。
看板の素材、書式が一緒なので
これらは県によって同時期に建設されたものと思われる。

なになに??
スダジイを主とし... ほう!ここの所注目している タブノキも上位に記載されているではないか。

今となっては昔の記録だが、南方系、関東地方以西に分布するチョウも生息している
良好な自然環境であるとのこと...。

よし、ではまず森の周囲からざっと観察してみよう!

ふ〜む、なるほど...。

この辺りにしては珍しく、背の高〜い樹々が沢山生えているようだ。


高い樹々が、何本も見えます。


一歩中へ入れば...

わ! このタブノキはでかいなぁ〜。()

おとうと が凄く小っちゃく見える。

これなら、ホシベニカミキリがいても何ら不思議はないだろう。
ただ、葉の上にとまっていたとしても、高過ぎて手が届かないだろうけどね... (^-^;


タブノキは結構沢山生えているようです。


このタブノキの他にも、スダジイ、エノキ、カヤ、ヤマザクラ、スギなどの巨木が
あちこちに生えており、まさに圧巻である。

私自身、今日初めてここを訪れた訳だが
おそらく この地を知っているのは、地元の人間ぐらいであろう。

森の片隅には、ひっそりと神社もあった。
う〜ん、土地の歴史を感じさせるなぁ...。

有名な神社ではなかろうが
今回は、完全に現場の雰囲気にのまれてしまった。。


神社もありました。


神社の裏手に回っても、やはり巨木が...
こんな海沿いの平野部にも、これだけ残されているんだものなぁ。。

まだまだH市も捨てたものではなさそうだ。


頭に入れておいて、損はない森かもしれませんね。



〜 赤い彗星、現る 〜


では、カミキリムシの調査に移ろう。

先程の保全地区を離れ、丘を降りてくると
割と広範囲にタケ林が見えるようになった。

私の記憶では、ちょうど1年前に採集したハイイロヤハズカミキリの記録が
H市には まだなかったと思うので
今回はその確認に時間を割くことにした。

小型の斧を片手に、まずは傾斜面をうろついてみる。

しかし、ハイイロヤハズが入りそうなタケ材がなかなか見つけられない。
ベニカミキリの古い脱出口は結構見受けられるのだが...。

かろうじて見つけた このような(↓)材に期待がかかったが

いかにもといった食痕が詰められていたにもかかわらず、奴はいない... (^-^;


材がちょっぴり太めかも...。


むむぅ... そう簡単にはいかないなぁ〜、ハイイロヤハズカミキリ。。
たかが... されど... というパターンだ。

まぁ、どこかにはいるんだろうけどね。... (^-^;



その後、田んぼの縁へ降りたって
その際(キワ)に連続するタケ林に沿って歩を進めてみたが
何となく、こりゃ〜駄目かな... という空気になってきた。

そんなとき、突如眼前に、タブノキの巨木が立ちはだかった。

ほんと、あちこちに生えている。
とりわけ今日は、縁があるようだ。

根本には、落ち枝も何本か見受けられる。

その中で、たまたま脱出口が2つ開いたものを見つけたので
とりあえず、右手に持っていた斧を、カコン!と入れてみた。

目的は?
決まっている。
昨年末から、気にかけていた(いまだ県内では報告数が少ない)
ホシベニカミキリの手がかりを掴むためである。

すると...

パコッ!と細長い蛹室が現れた。

そしてその中には、明らかにこいつを開けた主と思われる、甲虫の死骸のクズが
ボロボロになって散乱していた。

「何だ×2 ?」と言わんばかりに
それらを じ〜〜っと、眺めてみる。。

傍らには、既におとうとも駆けつけていた。


こんな感じです。左上には脱出口も見えます。


棒っきれで、その残骸をひっくり返してみると...

えっ、マジ!?

まさかとは思ったが、本当に真っ赤な上翅が顔を出してしまった!!()


まさか、こんなタイミングでくるとは思いませんでした。


うわぁ。。。

小さな声で、唸ってしまった。

私が知る限り 茨城県内では
戦前から今日にかけ、わずか3例(南で2例、昨年、2005年に北で1例) しか公的な記録がない
ホシベニカミキリの死骸である。


-ホシベニカミキリEupromus ruber DALMAN, 1817



それだけ以前までは、県内において大変珍なカミキリムシだったのだ。

南方から北上してきたと思われるこのホシベニカミキリ...
報告が途上している間に、近年、急速に数を増やしているものと予想される。

例え死骸であっても、これはホストのタブノキから材割りで得たものだ。
完全に、ここで定着し始めた個体と 判断して構わないだろう。
この事は、今後 重要な記録として報告できると思う。
よって死骸は、サンプルとして大切に持ち帰る事にした。


生体が得られなかったのは残念だが...
いやいや、これはこれで 充分過ぎる手応えである。

ある程度の予測に基づいた結果だったとは言え、半ば棚からぼた餅と言った感もあり
正直、凄く嬉しい♪

因みに、こんなポイントでの一幕であった。


この先にも、まだ数本のタブノキが生えていました。


因みに、同材からは非常に小さな幼虫も2頭得られた。
ホシベニカミキリかどうかを判別するほどの力量は、まだ私には備わっていないので
これ以上は何とも言えないが、一応参考までに写真を掲載しておこう。。


幼虫も出ました☆


うむ、今日のところは この辺でお開きにしよう。
おとうと共々充分に満足している。

気がつけば、ちょうど初めに設定した予定時刻を過ぎる頃だった。 … 15:00。
(そろそろお昼を食べないとっ! ... (^ ^ゞ )

当初の目的だった、ハイイロヤハズは、また後で。。


車までの帰り際、ふと遠方の崖っぷちを見やると...

あらら、いったい何をしてるんだろう? あの人は。。

地層調査でもしているのかしら??

わははっ☆

向こうさんも、同様の目でこちらを見ていたのかもしれない。... (^-^;


いったい何のために、どうやってあそこまで登ったのでしょうか??


さてさて、我々の方は 納得のいく仕事ができました故
お先に引き上げますよ〜♪



〜 後記 〜

今日は、気にかけていたホシベニカミキリの尻尾を掴むことができ
ほんと ラッキー☆彡 だった。
大変満足している。
できれば、今後早い段階で生体を確保しておきたいところだ。

いやぁ。。 時折 こういった興奮が訪れるから、ムシ採りは楽しい。

そして...

これまで、単なる自己満足でやってきた事が
いつの間にか、生まれ故郷における 甲虫分布調査という形へ
ステップアップしようとしている。

過去、そしてこれからの成果を、一時代の記録として残すために
その意義や使命を感じながら採集を楽しめる様になった事は
ムシ採り屋として、大変な喜びである。

今回の事は、後ほど おとうとの方から
長年、茨城県内の甲虫類を調査しておられる
るどるふ先輩へ伝えてもらった。

近い将来、是非報告書をまとめてみたいと思う。


〜 主な確認種

●カミキリ亜科
 ホシベニカミキリ(死骸) ×1





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