採集履歴
“2006年 R地区調査” 編 (3)
06.07.31 (Mon) Plain 「竹林採集、21度目の正直」 |
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今年の2月の事だ。 私は地元R地区のカミキリムシを調査する傍ら この地で未だ公的な記録がないタケトラカミキリに興味を持ち始めた。 昨年の、やはり2月に採集したベニカミキリ、ハイイロヤハズカミキリと同様に タケをホストとする代表的なカミキリムシなので 是非とも、これらをセットでおさえておきたくなったのだ。 やまぶき色の下地に、和のイメージを醸し出す 隈取りのような独特の黒色紋様を兼ね備えており 姿形もなかなか格好良いと思う。 たとえ “記録がない” とは言っても 竹垣や竹竿、竹箒などの竹製品を食害することで警戒される 大変有名なムシでもあるので 竹林を丹念に探せば、手が届かない相手ではなさそうな気がしてならなかった。 そんな訳で、06.02.25以来 私なりに単独で9回、おとうとの yasu と共に11回、合計20回のこまめな調査を積み重ねてきた。 その結果、早い段階で 羽脱孔と成虫の死骸を確認し R地区における本種の棲息事実を明らかにする事はできたものの 残念ながら、生体の採集だけができないまま今日に至っている。 大半のカミキリムシと比べ、成虫の出現期がやや遅い事を考慮し 今回はあえて約3週という間をおいてきたが... そろそろ狙い時かもしれない。
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〜 進展あり! 〜
12:30 に実家を出発した。
冒頭の表に示した、NT.B 地区へ直行する。
信号にさえ引っかからなければ、わずか3分足らずで到着できる
大変身近なポイントだ。
現場は、竹林で覆われた傾斜地上の高台で
そこには空き家や 狭い墓地空間などがあり
周囲には、今にも倒れそうな古びた竹柵が 長々と残されている。
よく見れば、竹製の箒や花立てなども放置されているようだ。
辺りは大変鬱蒼としており、若干不気味な雰囲気だが
なかば人の手が入った痕跡を残す竹林の方が
タケトラカミキリが生息するシチュエーションとしてはふさわしく思える。
林内にあったモウソウチクの立ち枯れからは、多数の羽脱孔や成虫の死骸が一頭確認されており
その実績を重視して、3月以降 集中してこの辺りをチェックするようにしていた。
そして21回目の調査機会となる今回、遂に状況の変化、進展が見えた。
なんと、前述の古びた竹柵に空いていた羽脱孔の数が、著しく増えているではないか... (◎o◎)!
更によく見れば、その周囲には 羽脱時に散らかされたと思われる
粉状のタケくずも まだそのまんま残されている。 ... (◎_◎)!
孔の下に、細かいタケくずが こぼれています。
間違いなく、昨日今日にできたばかりの足跡である。
勿論、孔の形、サイズといい、これらは明らかにタケトラカミキリのものだ。
て事は、この中に これから羽脱しようとしている成虫が
まだ沢山眠っているに違いない。
う〜む... まさに 絶妙のタイミング!
すぐに yasu を呼んで、この状況を説明した。
風がびゅん×2 吹いており
既に羽脱した成虫の姿など、どんなに頑張っても見つけられなかったので
竹材の表皮を剥がして、未だ材中に宿る個体を
ありがたく採集させていただくことにした。
ただ、放置された古い竹柵とはいえ
やはりそれを、むやみに破壊するわけにはいかない。
よって、ボロボロに崩壊した竹柵の廃材置き場から
同じような 新しめの羽脱孔が空いたものを厳選し、割ってみることにした。
よしよし、これなんか良さそうだろう☆
では、いざ...!
・・・・・。
ん? ちょっと待てよ??
そうだ、爺ちゃんの事を忘れていた... (^-^;
ここへやって来た時から気づいていたが
今日は珍しく、ご老人もお一方訪問しており
我々のそばで、草むしりや、落ち葉掃きなど
一生懸命、掃除に励まれていたのだ。
一応...
「網なんか持って、何採ってんだぁ??」
と尋ねられ...
「わはは、ムシを採ってるんですよ〜☆」
と返すと...
「あぁ?セミかい??」
・・・なんて軽いご挨拶を交わしたものの
物騒な斧を持ち出して材割りをするなんて
この状況下では、大変不謹慎な事に思えた。
ということで、材割りは爺ちゃんの掃除が終わるまで待つことにして
我々は一時現場を離れる事にした。
体中、何ヶ所も蚊に刺されていたので、薬でも買いに行ってこよう... (^-^;
〜 ちょっと休憩@クワ畑 〜
現場を離れたついでに、昨年の8月末に訪問したクワ畑にちょっと立ち寄ってみた。
スズメバチにちょい刺しされた場所へ、再びやってきました。
お約束の、キボシカミキリ、トラフカミキリなんかを見つけては
ほほ〜ぅ、今年も健在だね... よし×2♪
などと、変に納得してみる。 ... (^ ^ゞ
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-キボシカミキリ -(Psacothea hilaris PASCOE, 1857) |
やはり私は、生まれ故郷のありのままの姿を見つめることが好きだ。
一時代のものとはいえ、そんな愛着ある自然の姿を
カミキリムシを媒体にして、記録に残せるなんて
我ながら、大変やりがいのある仕事に取り組んでいると思う。
![]() |
-トラフカミキリ -(Xylotrechus chinensis CHEVROLAT, 1852) |
あとはクワカミキリがいれば完璧なんだけどねぇ...。
最近気づいたが、この辺りには いなくなっちゃったのだろうか。。
〜 遂にご対面!? 〜
ということで 1時間ほど間をとってから、いそいそと先程のポイントへ戻った。
入り口にあったチャリンコがなくなっていたので、爺ちゃんはお昼を食べにでも向かったのだろう。
それでは、今度こそ 遠慮なく作業に取り掛からせていただこう。
遂に成虫(生体)とのご対面である☆ ( →もはや確信している... (^ ^ゞ )
待ちに待ったこの感動の扉を、今ここで豪快に開けてみようではないか!
まずは先程目をつけておいた、長さ1m程の老朽材を、両腕でまっぷたつに割ってみた。。
こんなのを選んで、割ってみました。
すると何と、その割れ目から いきなり現れてしまった!
うおお〜!
とてつもなく熱い感情が、胸の奥から一気に こみあげてくる。
菌糸まみれだったので、上翅の一部が羽化不全だったが
それにしたって、こうもあっさりと出てくるなんて...
ふむふむ、こりゃ〜 いくらでも入っているぞ☆
と言うことで、2頭目が出るのは時間の問題だった。
ペリ〜っとタケ材の表皮を剥ぐと
蛹室の中から、美しい完全体が姿を現した!
うっしゃ〜!!!
まずは、「やっと出逢えた」という 歓喜の雄叫び...
そして...
カッチョイィ〜〜!!(>_<) (>_<) (>_<)
![]() |
.タケトラカミキリ ..(Chlorophorus annularis FABRICIUS, 1787) |
たかがタケトラカミキリに、どうしてここまではしゃげるのだろうか??
それだけ、これまでの道のりが長かったからであろう。
まさに、21度目の正直である。 ... (^ ^ゞ
よく見れば、今まさに羽脱しようとしている個体や...
出ようとしていたので...
出してあげました... (^ ^ゞ
時折、もうすぐ羽化しそうな蛹も見られた。
蛹も3頭おりました☆
あ〜、本当に嬉しいなぁ... (T^T) (T^T)(T^T)
この喜びをどう表現したらいいのだろう??
とりあえず、脳ミソが麻痺しているので
ついつい、ヤブ蚊どもに隙をつくってしまう ... (^ ^ゞ
どっぷりと 吸われてます...(^-^;
おっと、こちらでも顔を覗かせているぞ!
横顔のアップです☆
最終的に、この1m程の腐朽材からは
13頭もの成虫(うち2頭は羽化不全)が得られた。
こちらは、なかなか大型ですね!
ふゎ〜っ... もう充分である。。
食べ過ぎて、お腹がはち切れそうだ。。(^-^;
おそらくここには、この何十倍(あるいはそれ以上!?)の
タケトラカミキリが生息している事だろう。
後半はちょっと急ぎ足だったが
家を出てから、わずか3時間弱という短い行程の中で
大変意義のある成果をあげる事ができた。
そして、長かった一連の竹林調査行が これにて終了した。。
タブノキに付く ホシベニカミキリに続き、今夏中にどうしても確かめておきたかった
重要な宿題を片付けることができ、今日は大変満足している。。
この喜びを糧に、残りわずかな夏も 全力で楽しんで行こうと思う。
〜 後記 〜
という訳で、いわゆる普通種...
されど、このR地区には未だ公的な記録がないタケトラカミキリの生体を
本日21回目の出陣にして、遂に採集する事ができた☆
今の私にとっては
地元R地区において、こういった記録作業を一つ×2 成し遂げていく事こそ
使命感と、プライドを持って臨むべき本当の仕事と言えるので
この上ない達成感でいっぱいである。。
2006年 7月の終わりに
また一つ 貴重な想い出づくりができた...☆彡
〜 主な確認種(持ち帰り頭数) 〜
●ノコギリカミキリ亜科 | ||
ノコギリカミキリ | ||
●カミキリ亜科 | ||
タケトラカミキリ | : | ×13 |
トラフカミキリ | : | ×01 |
●フトカミキリ亜科 | ||
キボシカミキリ |