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“2007年 特定昆虫調査” 編 (1)



07.04.28
Sat) Mt 「歩いていきますか!」 
                                                                                                  

昨年の11月に、一通の封書が届いた。
内容は、「茨城県特定動植物分布調査」に関するものである。
趣旨が説明された文書の他には
調査個票と、対象となる昆虫の一覧表が添えられており
その一覧表をざっと眺めてみると
私が過去に確認済みの甲虫類もちらほら見受けられた。。

文書には、「平成7年以降の情報を要する」と記載されていたので
それならば、一昔前に確認したクワガタムシ(山地に棲息する小型種)の記録も、充分に活かせそうだ。
ただ どうせ記録調査にあたるのならば、なるべく新しい情報を残しておくのが良いだろう。。
それが茨城県の環境保全に資するものであれば、尚更である。

先日、水戸昆の大先輩であるWさんに
4年前に確認したツヤハダクワガタの生息場所をメールでお知らせする機会があった。

因みに、そのエリアへアクセスするための林道は
車での通行が非常に危険とされ、現在は入口から封鎖されている。
随分山奥の現場までは結構な距離があるので...

 今頃どうなっているのか分かりませんが
 ●●からの入口が封鎖されているとなると
 もう暫くは行けませんね...(^-^;


と、お伝えしたところ... Wさんは ただ一言

 「
歩いていきますか。」 との事... (^-^;

う〜む... そう言われてみれば、だん×2 あの場所が恋しくなってきたかも...
ということで、早速 行って来ます... (^ ^ヾ


〜 意義を持って 〜


さて、今日のノルマは 公的には未記録の地から
改めてツヤハダクワガタを確認してくること。。
ただ、それだけである。

結果は、幼虫であっても構わない。

とは言え、県内では(ブナ帯を除けば)
いざ探そうとすると容易く見つけられない種類の一つであるし
調査の趣旨を考えれば、やりがいはある。

また、るどるふ先輩、yasu のご友人が
本種の幼虫を研究されているそうなので
充分なサンプルが得られれば、ささやかながら力になれるかもしれない。。

と言う訳で、今回も それなりの意義を感じつつ
10:30 に実家を出発した。



GW初日の今日も、この田舎道は
相変わらず すいてました。。



午前中はやや曇っていたが
正午を過ぎると、次第に陽射しが強くなってきた。

う〜む、良い傾向♪

とにかく今日は、気合を入れて歩くぞ〜!


薄らと、山が見えてきましたね☆




〜 お久しぶりです! 〜


封鎖されている林道の入口に辿り着いたのは、13:30 ... (^-^;
家を出てから、なんと3時間もかかってしまった。。

(下道をトロ×2 走ってきたので結構くたびれたかも... (^ ^ヾ )

やはり、GWの初日というだけあって
各地で発生していた渋滞のしわ寄せを 避けることはできなかった。。

しかしながら、今日はここからが本番である。

リュックに必要な荷物を詰め込み
長靴に履き替え、準備を整えていると
体の内側から、自ずと 力が湧いてきた。

さぁ、改めて出発だ!


まずは、お約束のスギ林から。。


入口が封鎖されるほど、危険な林道とは
思えないのですが... (^-^;



この様な林道を、足早に40分ほど 突き進むと
ようやく広葉樹林が優勢となる山野が見えてきた。

うひゃー、懐かしい〜!


この辺で灯火を張れれば
面白そうですが。。



途中から横道に入り、更に歩を進めると
遂に かつてなら何とか車でやって来られた場所まで到達した。。

徒歩に切り替えてからは、実に順調な運びである。

よし×2♪


ところで... あれれ〜??

以前と比べ、随分雰囲気が違うなぁ。。(◎_◎;

ヤブ漕ぎをしながら突き進んで行かねばならない、幅80cmぐらいの山道の入口が
何だかとても広くなったような...


気がつけば、車のわだちもできてます。。


どうやら、山の管理者専用の作業道ができたらしい。。
こういう変化を知ると、随分と時が経過した事を実感してしまう。

まぁ、歩きやすくなったということで
気にせずに行こう。。

お!当たり前と言ってしまえばそれまでだが
早速ルリクワガタの産卵マークを発見。。



何気にここで見つけるのは初めてかも☆


ただ、本種については
ここから数km 離れた場所で成虫を確認したばかりなので
深追いはせず、あえてスルーする事にした。


しかし、気持ちが良いもんだな〜♪

眼下に見える小川に沿って、ゆっくりと歩くパターンは
当時と何ら変わっていない。。

言い過ぎかもしれないが、山の管理者がいないとすれば
今私は、この大自然をたった一人で満喫しているのだ。。

ちょっと得した気分である☆



川幅が狭いですが、渓流釣りも楽しめそうです。。


因みに、これは 2003年6月に撮影した写真。。
これから向かおうとしている場所には
当時、スギの林床部に こんな赤枯れ材があった。



赤枯れ材に、ツヤハダ・マダラの幼虫が潜んでいました。。



ワク×2♪

一歩ずつ 現場へ近づくにつれ
4年ぶりの訪問に対する期待感が膨らんできた。

そして... 車を降り、歩き始めてから50分が経過した頃。。

大岩に絡みつく、あの時の赤枯れ材が
遠くに見えてきた。。

おお〜!



久しぶりですね!



当時と全く変わってないじゃん!!

思わず、ちょっと感動してしまった... (^ ^ヾ

ところで... お目当てのツヤハダくんも まだご健在だろうか??

早速材を崩してみると、まずはクロナガオサムシが出てきた。。



クロナガオサムシ
Leptocarabus procerulus
CHAUDOIR, 1862



割と大きな個体なので
一応、この地の記録として持ち帰ろう。

そして...


いましたぁ〜!本命が♪



ツヤハダクワガタ
Ceruchus lignarius lignarius
LEWIS, 1883 



ただし、凄く小さいけどね... (^-^; (マダラの幼虫ではない。)

もうちょっと分かりやすい大きな幼虫はいないものかと
更に探してみたが、残念ながらこの赤枯れ材には
昔ほど沢山の幼虫が宿っている様子はなかった。。

しかし、懐かしい景観を想い出しながら
ここまで自分の足でやって来れたこと...
その上で、いまだツヤハダくんがいることを確かめられた経緯を考えれば
結果的に大満足であった。

とりあえず、無事に目的を達成でき 一安心である。

気がつけば、もう 15:00。。
この辺で、お昼を食べよう☆

今回も、しっかりとお弁当を用意してきたのだ♪




〜 雷雨 〜


ウグイスがさえずる、穏やかな天候の下で
のんきにお弁当を食べていたら
突然、雲行きがあやしくなってきた。

あっという間に、林の中が真っ暗に。。(^-^;

やがて、異様にも感じられる一度きりの強い風が

ビュ〜!っという音を立てながら吹き抜けた瞬間....

ザザザ〜!っと大粒の雨が落ち始めた。。

勿論、傘までは用意していない... (^-^;

しまいには、とてつもなく眩しい稲光が連発し始め...

ドカ〜ン!という大きな地鳴りと共に 雷が落ち始めた。

ヒェ〜!すぐ近くだ... (◎。◎;

えらいこっちゃ〜。。

ホント、山の天気は変わりやすい。。

どうやら暫くはやみそうもないので
仕方なく、もときた道のりを、びしょ濡れになる覚悟で歩き始めた。。

林道の周辺は、電線はおろか、人工的な工作物が何もなく
人間の生活の匂いが全くしない環境である。

可能性は極めて低いけれど
何とな〜く、左手に携えた鉈に雷が落ちるんではないか!?
などと、道中 ちょっと不安になったりもした... (^ ^ヾ


で、16:30 に ようやくマイ・カーのところまで戻ってきた。

言うまでもなく、髪や衣服はびしょ濡れである。。

タオルや、替えのシャツを持ってきておいて良かった♪


さ〜て、これから どうしよう??

一向に雨がおさまる気配はないが
まだ明るいし、時間的にはかなり余裕がある。

遠路遥々、せっかくここまでやってきたのだから
もう一踏ん張りしておきたいところだ。

そこで、昨年末 (06.12.09) のリベンジというわけではないが
もう一ヶ所、新たに別の場所でツヤハダクワガタを確認しておきたくなった。

少しの間 車中待機し
雨脚が弱まる頃合を見て再び出撃しよう。... (^ ^ヾ



〜 もう一踏ん張り 〜


静かに降りしきる雨の中...
新たな林道から、再び山中をさまよい始めた。。

基本的に、ブナは殆ど生えていないエリアだが
カツラなどの、絶好の赤枯れ材(極太の倒木)が何本も見つかる。

しかし、そこにツヤハダくんの姿はあらず。。

おかしいなぁ... (^-^;


逆に直径 15cm程の細い倒木を割ってみると...

おお!来たか!?

・・・と思いきや、マダラくんだった... (^-^;


マダラクワガタ
Aesalus asiaticus asiaticus
LEWIS, 1883 



時刻は、もはや17:50。。
さすがに 随分暗くなってきた。。

やはり、今日はこれ以上の展開が見出せそうにないかなぁ...??

そんなふうに諦めかけたとき
偶然目の前に 洞の中身が一部赤枯れした 細めの広葉樹を見つけた。

まとまった数の幼虫が成育するには、非常に狭いスペースに感じられたが
腐朽具合といい、含水率といい
直感で、これはいけるかな?? という気がした。

で、早速その赤枯れの一部を崩してみると...

おおっ!?


ツヤハダクワガタ
Ceruchus lignarius lignarius
LEWIS, 1883 



よっしゃ〜!(>_<)(>_<)(>_<)

ようやく、写真で掲載しても それと分かる
ツヤハダクワガタの幼虫が転がり出てきた♪

独特な顔つき、お尻のベンツマーク... 間違いない☆

良かったぁ... (^-^A

これにより、これまでの課題も含め、やり残しがなくなった。

因みに、潜んでいたのはこんな材 (おそらくヤマザクラ... 赤枯れ部分の上方)であった。

とりあえず、久しぶりに本種を飼育してみたくなったので
ここから6頭程頂いて帰ろう♪


辺りが暗いので、シャッター速度を落としたら
手振れしてしまいました... m(_ _)m



あちゃ〜。。

気がつけば、またも衣服と髪の毛がビッショリ... (^ ^ヾ

残り時間だけを気にしながら、血眼になって探していたので
そんな事などは、お構いなしだったようだ... (^ ^ヾ

ただ、雨の方は随分と小降りになった☆


蛇行する小川を縦断しながら 引き返しました。


車に乗り込んで、エンジンをかけながら 少々の想いにふけった。
考えてみれば、この山の恩恵を受け始めてから、随分と時が経ったものである。

多くの先輩方から比べれば、まだ×2 駆け出しの身分だけれど
私なりに、少しずつ 一定の区切り(節目)を迎える機会が増えてきたような気はする。。


昨夏、灯火でハンノアオを呼んだ山肌です。。


ひとまず、今日のところは、やれる限りの事をやった。
思い残す事はない... 帰ろう。。


麓までおりてくると、夕焼け空が綺麗でした。。



長く降り続いた雨が、ようやく上がり
これまで滞在していた山々の空が非常に明るくなった。

明日は、晴れそうである...☆



〜 後記 〜

21:00前に、実家へ帰宅した。

往路とは別のルートで、国道をデレ×2 走ってきたら
随分と時間を費やしてしまった... (^ ^ヾ

今日は、ツヤハダクワガタの棲息状況を確認するためだけに
某山の周辺を歩き回った。。

これにより、懐かしいエリアを 4年ぶりに訪れる機会が得られたし
また、新たなポイントを含め ツヤハダクワガタが健在であることも分かり
長時間に渡る移動等で、程よく疲れはしたが
無事に任務を達成でき、この上ない充実感が得られた。

“歩いていきますか!”

という提案に乗って、正解だった。

結果は後程、まとめて報告致します。。m(_ _)m



〜 主な確認種

●クワガタムシ科
 ツヤハダクワガタ 幼虫
 マダラクワガタ 幼虫





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