調査履歴

“2011年 R地区調査” 編 (35)



11.11.13
12.02.05 Plateau Plain 「近所のイヌザンショウから」 
                                                                                                  

今回は、タイワンメダカカミキリ にスポットを当てます。
これまで茨城県では殆ど記録がありませんでしたが
植生などの条件から判断すれば
本来、もっと広く分布していて良い種類だと思われます。

隣県においては、家具や擂粉木からも大量発生した記録があります。
かなりの乾燥材でも生育可能なのでしょう。

千葉昆の伊藤先生によれば、サンショウさえあれば...
とのことです。

そんな訳で、実家の近所に見られる 野生のサンショウを
チェックしてみました。

本報では特別に、年を跨いで 2012年 2月の模様も加筆しました。



11.11.13
A地区


実家から数百メートルの通りに、サンショウの樹が連立しているので
新成虫を得るなら そろそろいい頃かな... と思い
散歩がてら 確認をしに出かけてみました。


R地区には、林縁や藪などに
割と見られます。



まずは観察してみましょう。。

棘 ( トゲ ) が互生しているので
正確には イヌザンショウ ですね。。
( いわゆる サンショウは 棘が対生しています。 )



独特の香りが 漂います。



良く見ると、小さな羽化脱出孔が沢山開いてました。


サイズ的には、タイワンメダカ でしょうか...
材の好みが幅広い、アラゲケシカミキリ属 の
可能性もありますね。。



部分枯れを上手に利用して育っているようです。



生きている樹の幹ですから
折る訳にはいきません。



他のイヌザンショウも覗いてみましたが
どれも まんべんなく加害されているようです。

幼虫は、樹皮下から食べ始めるのが順序ですので
樹皮が残された、やや新し目の落ち枝があれば
生体の観察には好都合なのですが...


通りには 何本も イヌザンショウが見られます。



お! 運良く条件の良い落ち枝を見つけることができました。

通行人の邪魔になったのでしょうか??
明らかに人為的に切られたものです。


竹藪の中から 引きずり出しましたが
そんなに古くは ありません。



やや乾燥していますが、家具や擂粉木からも出ているぐらいですから
充分だと思います。。

人の目を憚らず、歩道にしゃがみっぱなしで 材をチェックしました。


断面には、カミキリムシの食痕が...



でました! 幼虫です。
それも、カミキリ亜科の顔をしています。



おそらく、タイワンメダカだと思います。



そしてすぐに 死骸が出ました。

小さな枝で かき出すと... ビンゴです!



上翅には V字が 2本 → タイワン確定です。
因みに、1本なら カッコウになります。



やはりいましたか。。
ここ R地区で確認できたことが嬉しい限りです。

新成虫の確認には至りませんでしたが
材には幼虫が入っている筈ですから
持ち帰り羽化脱出を待ちたいと思います。


--------------------------------------------------------------------------------------------


12.02.05
B地区


2011年ベースのページに、翌12年の模様を掲載するのは
いささか不本意ですが、対象としたフィールドが やはり実家の近所であり
かつ内容もイヌザンショウですので、ひとつに纏めることにしました。

ここは、
06.01.29 にも ご紹介したエリアです。
当時は雪の中で アケビ材より カッコウメダカカミキリも見つけています。

また 08.01.14 には、歩行虫を採集しました。

夜中に犬に吠えられたことも あったかな...


かつてより ご近所採集を楽しんできた
谷津田の周辺です。



以前、藪の中から サンショウの香りがしたことを 思い出してやってきました。


R地区の貴重な緑地が
ここにも残存しています。



手前の小道に入ってみると...


六地蔵尊の前を お邪魔して行きます。。



やはり、ありました!


棘が互生しているので
イヌザンショウですね。



割と太い幹のイヌザンショウが、7株ほど見られました。

こちらの枝は、折れている (折られてしまった?) ようです。。
小道の終点には個人の墓地があるので、通行の妨げになる枝は
定期的に伐採されるのかもしれません。

周辺を良く見ると、刈られた枝も散乱していました。


それにしても、どうして あんなところから。。



ダメージを受けた枝には、一斉にムシが宿ります。。

既に ゾウムシやら カミキリムシの食痕が走っておりましたので
頂いていくことにしました。。
これも、当たり材の予感がします。


日没直前に、カクレミノがあるポイントまで脚を伸ばし
タテジマくんの健在ぶりを確認してから帰宅しました。


タテジマカミキリ
Aulaconotus pachypezoides THOMSON, 1864



触角が切れて、大分くたびれているご様子ですが...
こうしていてくれるだけで、 ホッとしますね。。




〜 後記 〜


.. 持ち帰った材の経過を見たところ
無事にタイワンメダカカミキリが
羽化脱出し始めました。

B地区のものが、12.05.01 に 1頭。
 12.06.08 以降 3頭、4頭・・・と続き

A地区のものが、12.06.25 に 1頭。
 その後 7月中旬に 1頭 という結果となりました。

自部屋で飼育しましたので
条件は同じです。
それを考えると、文献で読んだ通り
羽化脱出期には 幅があるようですね。。

※ その他、アトモンマルケシカミキリや ケシカミキリ
シナノクロフカミキリなどが出てきました。
タイワンメダカカミキリ
Stenhomalus taiwanus
MATSUSHITA, 1933

12.05.01 B地区材より 羽化脱出



以下に ♀の標本写真を並べますが、カッコウメダカと同様に ツンツンとした毛が
生えています。 しかし、タイワンメダカの方が華奢で色彩も若干薄い印象です。

本文中にも記しましたが、R地区から本種を確認できて とても良かったと思います。
また、同じメダカカミキリ属の トワダムモンメダカカミキリ についても
調査不足の感を否めませんので、近々はっきりさせなければなりませんね。。

..
タイワンメダカカミキリ Stenhomalus taiwanus MATSUSHITA, 1933
A地区材(左)、B地区材(右)より羽化脱出





※採集記目次へ