調査履歴

“2012年 R地区調査” 編 (45)



12.04.01
Sun) Plateau 「スダジイの古木@環境保全地域めぐり その11」 
                                                                                                  

4月になりました。 これから徐々に カミキリムシが野外活動を始めます。
しかし そちらへ対応する前に、“ 環境保全地域めぐり ” の詰めに当たろうと思います。

かつて (11.08.23) 記した通り
年間平均気温が概ね14.0℃以上の温暖な R地区には
スダジイや タブノキなどを主とした常緑樹林が広く残存しています。

なかでも、社寺林などの纏まった緑地 27ヶ所

茨城県の自然環境保全地域 および 緑地環境保全地域に指定されいます。

規模の大きな自然環境保全地域は 8ヶ所(27.1ha)と少なめですが
緑地環境保全地域は19ヶ所(39.2ha)と多く
茨城県全体数 44ヶ所の 43.2%(面積割合34.4%)にもおよんでいます。
 
自然〜( 8 / 33ヶ所 ) ・ 緑地〜( 19 / 44ヶ所 ) → 茨城県の環境保全地域

長らく訪問を続けてきた R地区の保全地域も、残すところあと数ヶ所になりました。
せっかくですので シーズン・イン 前に全ての様相を把握しておきたいと思います。



12.04.02
環境保全地域 [ 羽脱孔× 死骸○ ] 


午前中は、自部屋に積み上がった材箱の露とりをしていました。
冬季には既に羽化していたヒメクロトラカミキリが、続々と材内から脱出しています...

R地区の調査報告書には、各種記録地の分布図を添える予定ですので
産地と頭数を 全てメモしておきました。
普通種とはいえ、ぬかりなく。。

今夏は、調査と同時に 長年の成果を纏め上げていく予定です。

これまでずっと頑張ってきたわけですから
少々辛くなっても 自信を持って取り組もうと思います。
普段どおり、気負わずに... コツコツとマイペースで臨みます。

さて、昼食後 13:00 に家を出ました。

地図を片手に、のどかな春の田舎道を流します。
目指すは、N台地の西側です。




あ... あそこかな??
こんもりと照葉樹林が見えてくれば、概ね予想がつきます。

やっぱりそうでしたね。
車を停めると、林縁に区域の名称が入った白杭が打たれていました。




散策を開始するやいなや、スダジイの古木が
どか〜ん!と 云わんばかりに登場しました。

この時点で、ここはプロット@ベーツ を確信しましたよ。




林床も、常緑照葉樹林らしい独特の様相を呈していますね。
何だか千葉みたいです。

低木層には、シロダモ、ヤブニッケイ、ヤブツバキ、ヒサカキ、モチノキ などが見られました。





古い神社の鳥居を見つけました。
その横には、お約束のブラックボードです。





う〜ん... ここは、匂うな。。

林縁に生えた一本のスダジイが特に気になったので
根際の窪みの中を チェックしたところ
案の定 ベーツ♂の前胸と 上翅が出てきました。

やはりここは、黒@プロット でした。




畑地際の小道を辿りながら、林縁を眺めていくと...

ややや!?

遠方にもブロッコリー + 神社の鳥居が見えます。





ならば、あちらも チェックしなければ なりませんね。


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12.04.02-2
[ 羽脱孔× 死骸× ] 


辿り着いたのは、こんなところです。。

環境保全地域ではありませんが
立派なスダジイが、お堂を包み込んでいました。




ベーツの死骸を見出すことはできませんでしたが、当然いるでしょうね。。
先程の保全地域と隣接していますし、想像以上に樹林の規模が大きく驚きました。

見上げてばかりではなく、たまには地面も...
境内の苔を剥がしてみると、カントウアオオサムシが越冬していました。
こちら方面には、セアカオサムシがいるのでしょうか。。




林縁にも、樹齢を重ねた貫禄あるスダジイが多数見られました。
思わず、これは凄い... と唸り声が出ます。

また、竹林を囲う タケの垣根には
ベニカミキリと タケトラカミキリの羽化脱出孔が多数認められました。




次回の訪問が、楽しみです。





12.04.02-3
環境保全地域 [ 羽脱孔× 死骸× ]


続いて、高台に見えてきた あの森へ。。

付近の公民館に駐車してから鳥居の方へ歩み寄ると
ブラックボードが出迎えてくれました。





けっこう急な斜面ですね。。 どうやって取り付こう。。

ちょっと思案しましたが
お堂の裏手に回ってみると、古い石段が見つかりました。





しかし、その石段もすぐに途絶え 藪漕ぎを余儀なくされました...

途中で見かけた、ヤブニッケイと、ヤブツバキです。





黙々と登って行くと、石段が復活しました。

高台上には、基壇らしき囲いの跡や
祭事に用いられた(?)石仏なども見られました。
神聖な場所なのでしょう。

で、樹林の様相ですが やや太いスダジイ、タブノキ、コナラなどが混生しており
林床には、クマザサやソテツ類が見られました。

ベーツの可能性は、低そうです。






12.04.02-4
環境保全地域 [ 羽脱孔× 死骸× ]


まだ見ぬ城跡を目指し、東へ移動しました。




地元にお住まいの方から アプローチ方法を尋ねつつ、こんなところへ。。




ここは、やや規模の大きな環境保全地域でした。

城跡らしく、樹林内にはお堀の跡まで見られましたよ。





スダジイ、タブノキの他、アカガシ、シラカシ、モチノキなど。。
樹層は濃いのですが、ベーツの棲息の可能性は薄い気がしました。
羽脱孔も見出せませんでした。




しかし、R地区においては貴重な残存緑地の一つです。
棲息する動物や昆虫によっても その証明ができることは素晴らしいですね。





ブラックボードは、現地を去る直前に ようやく見つけることができました。




12.04.02-5
環境保全地域 [ 羽脱孔× 死骸× ]


太平洋が見えてきました。 最後は沿岸部 K台地です。
勢狼の発祥地 オリヂナル の近くになります。

う〜ん、やはりタブノキが多いですね。

R地区の自然林は、スダジイ・タブノキ がメインになりますけど
沿岸部ではタブノキが、内陸部ではスダジイが優占する傾向があります。

さぁ、遂に R地区 27ヶ所目の環境保全地域が見つかりました。
ここが最後です。




自然環境保全地域ですので、緑環よりも面積が広いです。

ブラックボードは何処でしょう??

他地域と同様に、鳥居やお堂の傍に 添えてあると思うのですが...
なかなか見つかりません。。





台地上を行きます。

周辺には、スダジイも何本か見られましたが
ベーツの手がかりは見出せませんでした。

それにしても、規模が大きい。。
このような自然林が、かつては海岸線一帯に広がっていたのでしょうね。。

ん? 突然お堂の方へ導いてくれる小道が現れました。
行ってみましょう。。





はて? この辺にボードがあっても良さそうなものなのですが...

ありました!

土手というか、切り通しの傍。。
斜面の影ですので 分かりにくいですよ...
ここまで入って なおかつ気付く人は、少ないと思います。




林床には、大型のシダ植物 イノデが沢山見られました。
教科書通りの タブノキ - イノデ群集 ということになりますね。




それからヤツデも多かったです。
タテジマくんはいないかな?と探してみましたが、見つかりませんでした。

因みに カクレミノは無し。 N台地ならば ポツリポツリ見られますけどね。。

他、シロダモや ヤブニッケイが見られました。



〜 後記 〜


これで、R地区における環境保全地域 全 27ヶ所に加え
一般の社寺林 17ヶ所、計 44ヶ所の照葉樹林を把握しました。

過去の各種報文で読んだ通り、沿岸よりではタブノキ-イノデ群集
そして内陸部ではスダジイ-ヤブコウジ群集が優占する傾向を
自分の目で確かめ、認識できた気がします。

盛夏の頃には、これら樹林をベースにしてベーツヒラタカミキリの分布調査を
実施し、水戸昆虫研究会の会誌に報告する予定です。





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