採集履歴

“2007年 今夏の課題” 編 (10)



07.08.13
(Mon) Mt 「リベンジ 2」 
                                                                                                  

今度こそは!と意気込みながらも、リベンジに失敗したのは つい昨晩の話。。
それも、ゴールを目と鼻の先にしながらの結末だったので
どうしても 割り切れない気持ちが午前中からあった。

今日もお盆休みだが、さすがに連日の出動予定は立てておらず。。
疲労で、なか×2 言うことを利かない体を休めながら、地形図ばかりを眺めていた。。(^-^;

春先から 幾度も脚を運んできた こだわりの山で
何としても頂上における初灯火の夢を叶えてみたい。。

それにより、レアなムシが採りたい訳ではない。
目的のムシも、いない。 ただ...
「どんなムシが飛んでくるんだろう???」
「故郷の新たな一面を知りたい!」 ・・・という好奇心と
「自分自身に課した試練をクリアしたい!」・・・と、切に願う気持ち。。
それらに火が点けられたままで、完全燃焼できないでいた。

そして... 体力がほぼ回復し、13:00を回った頃。。。
そんな想いを、静かに抑えつけていられる状況ではなくなってきた。

これまでの主な敗因は、「時間がなくなった。」の一言に尽きる。
これから出かければ、まだ充分に間に合うだろう。

よし、ケリをつけに行こうではないか。。


〜 ジグザグ登山 〜


今夜こそは決める!

そんな気持ちで選択した登山コースは
昨日と同じ、これまでに経験した山頂へ至る 3ルートの内の
最も距離がある一本である。

ただし、「詰め」の段階で 少々の軌道修正をするつもりだ。


今日はまだ、充分に陽が残っています。



作業道の終点へ到着したのは、16:30 のこと。。
昨日より、1.5時間も早い。

よ〜し!
やってやる、やってやるぞ〜!!


16kgの発電機、ガソリンを持って再出発です!

今日も、yasu に手伝ってもらいます。


今回は、昨日とは尾根への乗り方を若干変えて
三十本 改め 二十本の丸太橋を渡り、イバラの斜面を行くことにした。

yasu に先導してもらいながら、ゆっくりと標高をあげていく。。


このまま前方の林へ突入し...
折り返し、右側に見える斜面に出て
登っていく事にしました。


林内へ入ると、川と踏跡が同化してしまいました。
仕方がないので、そのまま180度向きを変えて
ヤブ漕ぎ登山にスイッチです。。


再び、先ほど示した斜面に出ました!
イバラの 植林地は、痛いし歩きにくいですが
まだ大分明るいので安心です。。


暫くまっすぐに進み、突き当たれば 更に180度向きを変え...
これを繰り返しました。。
急斜面を、ジグザグに登っていく感じです。。


最初に突入して行った スギ林を眼下の谷間に見ます。
ダイレクトに まっすぐ登ってこられれば、本当に近道
なのですが。。かなり傾斜がきついので、危険です。。



足元には、可愛らしいコバギボウシ(Hosta albo-marginata)の花が沢山咲いていた。。
徐々に くたびれてきたが、思わず立ち止まって シャッターを切る。


やはり、花はいいです。


スタートしたのは、谷間の先に見える、あの林の向こう。。
例え危険でも、あそこからショートカットして来られれば。。
なんて、ふと考えてしまう。


ここまで上がるのには、結構時間がかかりました。。



帰路は真っ暗な夜道となるので、その時の手掛かりとするために
時折、来た道のりを振り返り 写真を撮りながら前進した。。

やがて、無事に尾根線へ乗り 薄暗いスギやヒノキの植林内を延々歩き始めた。。



〜 念願の光 〜


もうすぐだ!

待望の山頂直前で
幾つかの尾根線が複雑に交錯したが
用意しておいたコンパスが役に立ち
大して迷うことなく、最後の急斜面を一気に駆け上がった。

来た〜!!(>_<; (>_<; (>_<;

遂に
山頂到達である。

ここへ辿り着いたのは、これで2度目の事になるが
灯火セットを担いでの頂上は無論これが初めてだ。

これでようやく、念願が叶う。。

高齢のブナ、イヌブナやミズナラの大木も散見され
向こう側には、“てっぺん” が良く見えた。。

あぁぁ... 達成感のあまり、自然と心が躍ってしまう。。(^ ^ヾ

まず手始めに、今宵 ライトを灯す場所を決めてしまい
(一発勝負なので、入念に検討した。)
その後、陽が落ちるまでの約1時間は
少しでも多くのカミキリムシを確認しておこうと
立枯れや、倒木をチェックすることにした。


この細い立枯れはいいですね〜!


写真の立枯れからは、コバネカミキリを発見。。
こういうのを手堅く押さえられると、実にありがたい。

この立枯れ... おそらく数週間前なら
他のカミキリムシも 色々付いていたに違いない。


コバネカミキリ
Psephactus remiger remiger
HAROLD, 1879



ブナの倒木からは、ウスイロトラカミキリが。。
いかにもヒゲナガゴマフが付きそうなシチュエーションだったが
残念ながら、今回は見つけられず。。


ウスイロトラカミキリ
Xylotrechus cuneipennis
KRAATZ, 1879



また、シデの立枯れからは、セミスジコブヒゲカミキリをゲット。。
これらは全て普通種だが、1986 年以降、ここでのカミキリムシの記録は皆無なので
しっかりと保管しておかねば。。


セミスジコブヒゲカミキリ
Rhodopina lewisii lewisii B
ATES, 1873



で、肝心な灯火の方だが、今晩はこんな所で行うことにした。

眼下はかなりの急傾斜であり、山頂付近では一番周辺の見通しが良く
ライトを照らすのには持って来いのシチュエーションと言える。


尾根上からトライします。


しかしながら、よりによってここだけは
付近にブナなどの大木が見えず それが唯一残念なところ。。
やはり、全てを満たす場には、なか×2 巡りあえないものだ。

コナラ・ミズナラ・シデ・ヤマザクラ・ホウノキなどの林を前にしながら
ワンチャンスにかけてみたい。


そして 19:00 ジャスト...

遂に、遂に!念願の光を灯し始めた!!

ムシが飛んでくる前から、既に満足気味。。
あたかも、ウイニング・ランを始めた様な心境だった。。(^ ^ヾ

立ち上がりの状況も この通り(↓)、抜群である。


なか×2、いい感じです。


時折、尾根を挟んで反対側のスギ斜面から 強い風が吹き上がってきたが
それに押し戻されることなく、シートには続々とムシが増えていった。

気温・湿度が共に高いせいか、今宵のムシ達は大変元気である。

スジクワガタ、アカアシクワガタをはじめ...


アカアシクワガタ
Dorcus rubrofemoratus
VOLLENHOVEN, 1865



甲虫は、コガネムシ類、コメツキムシ類、シデムシ類、ゾウムシ類、ゴミムシ類と
一通りやってきたので、大概のものは写真に収めた。

その他には、こんな面白いムシも。。


キカマキリモドキ
Eumantispa harmandi
NAVAS



カマキリ同様、前脚で小型のムシを捕まえ食べていたが
やはり、“モドキ” だ。
上半身はカマキリにそっくりでも、下半身はカゲロウである。

アミメカゲロウ目、カマキリモドキ科に属する。

メインの「カミキリムシ」の方は...
ウスバ、ノコギリ、ホソ、カタシロゴマフ、ゴマダラといった定番から
こんな逸品も。。


トゲバとはちょっと違うようです。。


トゲバ?ゴマダラモモブト??
どうも、しっくりと来なかったので 帰宅後に図鑑検索したところ
ホウノキトゲバカミキリであることが分かった。

ラッキ〜♪ 個人的に初採集である。

後肢腿節に剛毛列がないことが、判断の決め手となった。


ホウノキトゲバカミキリ
Rondibilis sapporensis
MATSUSHITA, 1933



ライトの正面に、ホストとなる ホオノキの巨木が生えていたので
おそらく、そこから飛来したのだろう。


あっという間の2時間を、一生懸命に楽しみました。。


と、ここで 残念ながら、タイム・アップ... (21:00)。

少々場所を変えて、もう暫く様子を見たい気持ちも出てきたが
明日からの事情を考え、潔く引き上げることにした。

考えてみれば、充分に良くやったではないか。。

ずっと私を魅了し続けてくれた この山に 心から感謝したい。。
今夜は本当にありがとうございました。。m(_ _)m  



〜 試練の下山劇 〜


さぁ、もう一踏ん張りだ。
今晩の帰り道は、これまでで一番長く、そして険しい。

しかし、これが最後なのだ。
気合を入れて〆括ろう!

片方の手で スイッチを入れっぱなしの発電機を握り...
もう片方の手で、二つの照明器具のうち、一つを握り...
ライトを灯しっぱなしで、現場を後にした。。(21:25)

この状況での歩き方は、発電機を肩に掛けるより 腕への負担が大きく
握力も一気に消耗し、物理的な疲労が著しい。
しかし、懐中電灯とは比べ物にならないほど前方が明るく照らされるので
精神的には かなりラクである。

まずは、40m程の急な登り坂を這い上がり
再び山頂の前を通って、以後、延々と下って行った。

歩き始めて、40 分程が過ぎ
ようやく、昼間に登り詰めた植林斜面の上に出た。

さぁ、どうしよう???

往路(登り)の様に、“ジグザグ” しながら地道に降りるか??
安全面を考えればそれが一番だが、果たして体力がもつのだろうか???

かなり悩んだ末...

yasu の一声で 「いや、ショートカットして まっすぐに行こう!」

と言う事になった。

この選択が良かったのか悪かったのか... 未だ分からないが
かなりハードであった事は間違いなかった。(^-^;;

植林後の斜面地など、誰も歩く事がないので 手掛かりとなる踏跡は一切ない。
山の様なソダ積み場へ 誤って脚を踏み入れてしまうと
片脚だけが 落とし穴にハマった状態になり...
なおかつ、両腕もふさがれているので
踏ん張りが利かず、這い出すのが(片脚を引っこ抜くのが)大変だった。
(普段から股割りをやっていて、ホント助かった。。(^-^;)

私が持つライトだけが 行く手を照らす唯一の頼りなので、復路は私が先を行かねばならない。。
片腕さえあけば、杖をつきながら 地盤の固さを確認しつつ前進できるのだが。。

更に、枯れたイバラや 針葉樹のソダがあまりにも沢山散らばっており
発電機にさし込んであった照明のコンセントが
それらに引っ掛かって 抜け落ちてしまうといったアクシデントまで頻繁に勃発。。

突然 真っ暗になってしまうので、これには相当焦った。

一度熱を持った照明器具は、暫く冷やさないと再点灯できないため
その都度、もう片方の休ませておいた照明器具とチェンジしながら
ゆっくりと歩を進めた。。

発電機そのものが落ちてしまった時には
暗闇の中で しゃがんだまま 再び動き出す “機” を待ち続け。。

遂に、斜面の一番下まで降りてくることができた時には、思わず...

助かった〜!

と大声を上げてしまった。。(^ ^ヾ


やがて... ようやく広い作業道に辿り着き。。


ここまで来れば、もう安心です。。


何とか無事に、車の所へ帰還できた。。(T^T) (ToT) (T^T)


お疲れ様です。。

だからその服装は暑いって!... (^-^;


脂汗か?それとも冷や汗か??
嫌〜な汗を、びっしょりにかいていた。

時計のデジタル表示は、23:00 ジャスト。。
1時間 30分の、短いようで かなり長く感じた道のりだった。

終わった。。
これで、私のムシ採り人生は峠を越えたのだ。。

本当に今回は良くやったよ。。

助手席のシートに どっしりと座り込み
シーズン中に この山で出逢ったカミキリムシ達を
一通り思い浮かべながら、満足気に家路についた。。



〜 後記 〜

帰宅したのは、1:05 のこと。。
昨晩同様、道がかなり空いていおり
約2時間で、あっという間に帰ってくることができた。

今回は、07.04.1407.04.2007.05.2007.07.0507.08.0407.08.12... 他、
何度も脚を運んで調査を重ねてきた こだわりのエリアで
ようやく、納得がいく 灯火ができた。。
目標とするムシなど 設定してはいなかった。
ただ、ここでライトを灯すことだけが 私のゴール地点だったので
本当に満足している。。

帰り道... 片手に 16kg の発電機、もう片手に照明器具を灯しながら
それを、休み×2 交互に持ち替えて。。
ヤブ漕ぎ、斜面下り、照明器具の冷却を繰り返し。。
23:00に、1時間30分かけて車のところへ辿り着いたときには
この上ない達成感でいっぱいだった。


今シーズン、これから何が起ころうが
今回の想い出こそが、私の最高の財産となる。。



〜 主な確認種

●フトカミキリ亜科
 ホウノキトゲバカミキリ





※採集記目次へ